英EU、離脱後の通商など将来関係で大筋合意
【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)と英国は22日、英国がEUを離脱した後の通商など将来関係の大枠を定める「政治宣言」案で大筋合意したと発表した。25日に開く緊急EU首脳会議で、離脱後の条件を定めた離脱協定案とともに、正式決定したい考えだ。宣言案では離脱後の通商関係について「広範囲の自由貿易圏」をめざすと明記した。
英国のメイ首相は22日、首相官邸の前で記者団に「最終合意は手の届くところにある」と表明。EUとの交渉内容について「(英国の)国民投票の結果に沿った正しい合意だ」「国境や法に関する英国の主導権を取り戻し、国の尊厳を守り抜くものだ」などと訴えた。
EUは25日の首脳会議で、離脱時の条件を定めた「離脱協定」案と「政治宣言」の双方の正式決定をめざしている。すでに585ページに及ぶ離脱協定案をめぐっては英・EUが政治レベルで大筋合意済み。26ページの政治宣言案でも大筋合意したことで、英・EUの離脱交渉は25日の正式合意へ大きく前進した。
政治宣言は2019年3月の英離脱後に始める英国とEUの通商協定などの基本方針を定めるのがねらい。政治宣言案ではモノの貿易について「野心的で広範囲な、バランスのとれた経済パートナーシップ」をめざすと明記。サービス貿易についても、世界貿易機関(WTO)協定を「はるかに上回る自由化」をめざすと盛り込んだ。
金融サービスをめぐっては「同等性評価」のしくみを相互に導入する。例えば、英金融機関はEU側が英国の金融規制がEUと「同等」と認めればEU域内で営業できる。離脱後の英金融機関はEU市場へのアクセスが現状よりも制限され、英国とEUが原則として互いを日米などと同じように「第三国」として扱う格好になる。
欧州メディアによると、英・EUが合意を積み残していた20年末までの離脱移行期間の延長については「最大1~2年」の延長を認める見通し。移行期間は離脱後も英国をEUの単一市場や関税同盟に残して環境の激変を避け、その間に通商協定を締結・発効するのがねらい。英・EUは延長は「一回限り」とすることで合意済みだったが、いつまで延長するかは結論を持ち越していた。
英・EUは25日に離脱協定案と政治宣言案を正式決定したうえで、協定案の議会での承認手続きに入る。ただ英議会では協定案をめぐり「離脱後も英国が主権を取り戻せない」と反発する声が広がる。議会が否決して19年3月に英国が無秩序な離脱に向かうリスクは依然残っている。