中国5県の上場企業 豪雨、原油高で「稼ぐ力」衰え
18年4~9月期 41社中28社で営業損益が悪化
中国5県の上場企業の稼ぐ力が弱まっている。3月期決算の上場企業のうち、金融を除く41社のうち28社で2018年4~9月期の営業損益が悪化。全社を合わせた営業損益の黒字額は前年同期から35%減少した。原燃料高や人手不足による人件費増に加え、サプライチェーンの寸断などで生産が落ち込むなど西日本豪雨の影響も追い打ちをかけた。
豪雨関連では製造業を中心に生産が滞ったことが本業の稼ぐ力を弱めた。マツダでは7月に本社工場(広島市)、防府工場(山口県防府市)の操業を一時停止させた。9月に入るまで生産は完全には回復しなかった。18年4~9月期の連結出荷台数は約2万2000台の減少となり、営業利益に与えた損失の影響額は約150億円だった。
自動車生産の一時停止などに伴い、サプライヤーにも影響があった。樹脂製バンパーなどが主力のダイキョーニシカワでは、豪雨の影響額が同期間で約16億円だったとはじく。
豪雨による国道の通行止めや運休などが響いたのは広島電鉄。宮島(広島県廿日市市)への観光客が一時落ち込んだこともあり、運輸業のセグメント損益は5億8100万円の赤字(前年同期は2億1000万円の赤字)と赤字幅が拡大した。
一方、豪雨影響を取り除いたとしても中国5県の企業が厳しい環境に直面している。18年4~9月期に営業損益が改善した企業は41社中13社と40社が対象だった前年同期から4社減り、悪化した企業は5社増えた。
背景にあるのは原燃料価格の上昇だ。広島ガスでは原油高を背景に液化天然ガス(LNG)などの燃料調達価格が上昇。営業損益は3億5400万円の赤字(前年同期は7億8000万円の黒字)となった。
宇部興産では化学製品の値上げが浸透したものの、セメントの原料になる石炭価格の上昇で建設資材事業の採算が悪化した。中国塗料では船舶用塗料の販売が伸びたが、原料価格の上昇で2億3700万円の赤字(同22億円の黒字)となるなど、原燃料高による苦戦が目立った。
営業損益が悪化した28社のうち赤字転落や赤字が拡大したのは8社。豪雨被害が採算の悪化に追い打ちをかけた面もあるが、価格転嫁やコスト削減などの巧拙が今後の収益力改善を左右しそうだ。
豪雨に伴う特別損失の合計は89億円にのぼった。豪雨関連の特損を計上した企業は11社と全体の約3割を占めた。
豪雨関連の特損では全体の9割を中国電力とマツダが占めた。中国電は電柱の倒壊や折損に伴う修復費用で43億円、マツダは生産ロスに伴う固定費の損失で37億円を計上した。青山商事は3億800万円、ダイキョーニシカワは1億1200万円をそれぞれ計上した。(広島支局 田口翔一朗)