九州・沖縄 大手の稼ぐ力失速、6割で経常損益悪化
上場50社の4~9月期、コスト増響く
九州・沖縄の主要企業の稼ぐ力が弱まってきた。上場企業の2018年4~9月期決算では、6割の企業の経常損益が前年同期から悪化した(前年同期と比較可能な企業が対象)。原油高や人手不足による人件費増といったコスト負担が響いた。売上高規模で上位10社はほぼ減益で、大手に力強さが欠ける。価格転嫁や構造改革の巧拙が今後の業績を左右しそうだ。
九州・沖縄に本社を置く上場企業で、金融機関と前期比較ができない一部を除いた50社の決算を集計した。売上高の合計は5%増の3兆648億円だったが、経常利益は33%減の1285億円となった。
赤字転落や赤字拡大を含め、経常損益が悪化した企業が29社を占めた。増収減益は18社で、売り上げが伸びても、コストが上昇し利益率が悪化した企業が目立つ。
対象企業のうち、九州電力を筆頭として売上高上位10社では、9社が経常減益だった。九州・沖縄の企業の総売上高に占める10社の比率は78%で、前年同期と変わらなかったが、経常利益は70%となり、10ポイント低下した。
九州電力の連結経常利益は63%減の295億円だった。川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の定期検査に伴う修繕費や、燃料費調整の期ずれなどが影響した。下期には原発の定期検査がなくなるため、19年3月期の業績予想数値を据え置いた。
TOTOは稼ぎ頭の中国事業が失速した。中国で高級不動産物件の販売規制が強化され、衛生陶器の新製品の投入遅れも響いた。中国事業の営業利益率は2割強と、日本の住宅設備事業の1ケタに比べて大きい。
下期も中国事業失速の影響が残る見通しで、清田徳明副社長は「19年度には事業収益を17年度の水準まで戻したい」と話す。
多くの企業に影響したのが原油高や人件費の増加だ。西部ガスは原油価格上昇で都市ガスの原材料費が増加。西日本鉄道はバスの燃料である軽油価格の上昇で、費用が約5億円増えた。第一交通産業もバスやタクシーの燃料費高騰などで連結経常利益が2割減った。
包装材メーカーの大石産業は、原料の古紙市況や燃料価格の上昇が響いて4期ぶりの経常減益だった。大久保則夫社長は「価格転嫁などを進めて反転攻勢したい」と話している。
売上高上位10社で唯一経常増益だったヤマエ久野も18年3月期に買収した企業の業績底上げ効果が大きい。既存事業ベースでは経常減益だった。人件費や原油価格の高騰で販管費が30%増えた。大森礼仁社長は「物流ドライバーの人件費は上がるばかり」と話す。
オーケー食品工業はコンビニ向け商品の不振に加え、採用難に伴う人件費など労務費の増加が想定を上回ったことなどで、19年3月期の通期予想を下方修正した。
生産年齢人口の減少もあり、人手不足はすぐには解消が見込めない。米中の貿易摩擦などで国際情勢も先行きが不透明さを増している。
日銀福岡支店の宮下俊郎支店長は「コスト増を価格設定に反映させられるか注視している」と話す。足元の景気は底堅く推移しているが、中長期的な成長のためには収益構造の改革が迫られる。