英政府が承認した離脱協定案の要旨
英政府が14日の臨時閣議で承認した欧州連合(EU)からの離脱協定案の要旨は以下の通り。
【移行期間の扱い】
○英国がEUを離脱する2019年3月から、20年12月31日までの間、原則として現行のEUルールが英国でも適用され、EUの監督・司法制度が英国で運用される。
○英EUで将来の外交・安全保障の取り決めが発効した場合、関係するEU法は英国内で効力を停止する。
○英国はEUの外交政策に関する決定に従わない選択をする場合もあり得る。協調行動が必要な際は事例ごとに協議する。
○英国はEU内での機密情報共有から除外されうる。
○EUの組織や会合に英国が参加するかは事例ごとに判断する。ただ、一定の会合などには必要に応じて代表者や専門家が引き続き参加する。現在EUが英国の代表を務める国際組織で、EU代表団の中に英国が加わることもある。
○外交の継続性を確保するため、EUが第三国と交わした取り決めにおいて、英国はEU加盟国として扱われる。
○英国は移行期間終了後に発効する貿易協定などについて、第三国との取り決めを交渉・署名・批准できる。
○移行期間が延長された場合、英国はEU予算から外れ、必要に応じてEUに財政的な支払いを行う。
○英国とEUは新たな法律などに関して情報交換を続ける。
【アイルランド国境】
○EU加盟国のアイルランドと英領北アイルランドの国境はモノの行き来を自由にし、税関を設けない。
○北アイルランドの扱いを巡り、英国は20年6月末までの間に、移行期間延長を申し出ることができる。
○20年末までの移行期間中に、北アイルランド問題が解決しない場合、英国は「(英国全土をEU関税同盟に残す)バックストップ(安全策)」か、移行期間を延長するかを選ぶことができる。延長の可否は英EUの共同委員会で判断する。
○英国とEUは世界貿易機関(WTO)にかかわる問題については協力を続ける。
○英国とEUはそれぞれが単独でセーフガード(緊急輸入制限)を導入することが可能。
【離脱に伴う清算金】
○英国がEUに支払う必要のある「清算金」について、英国は合計350億~390億ポンド(約5兆1700億~5兆7600億円)と推計。
○英国が負担するEU予算について、20年までは支払いを続ける。EU機関職員の年金などについては、20年末までに発生した分は負担する。
○離脱交渉を担う共同委員会とは別に、清算金支払いを管理する特別委員会を英EU共同で設置する。
○英政府は清算金について年1回、英議会に報告する。英政府のEUへの支払いについて毎年議会に報告する制度を維持する。
○欧州投資銀行(EIB)や欧州中央銀行(ECB)への払込資本金は、英国に返還される。
○英国がEIBに支払った35億ユーロ(約4500億円)は19年から12年間かけて返還される。
○英政府は清算金の支払いにあたって、英政府の代理となる監査役を任命する権利を求めて、EUと交渉する。EUは監査役に対して情報提供を行い、業務を支援することになる。
【市民の権利】
○英国で暮らすEU市民と在EUの英国市民に対し、居住や労働、教育などの権利について、20年末までの移行期間終了後も離脱前と同等の権利を保障する。
○移行期間の終了時点で、合法的かつ継続的に英国で5年間暮らすEU市民や、EUで5年間暮らす英国市民に対しては永住権を保障する。5年間に満たない場合、5年間に達するまで住み続けることができる。
○一般労働者や自営業者、国境を越えて働きに来る労働者らは、労働条件や労働支援などで現在同様の平等な権利が保障される。弁護士や監査役などの専門職も資格を保持し続ける。
○離脱協定に含まれる市民権は英国法に組み込まれる。市民権の内容解釈や各種の問題について、英国の裁判所は(EUの最高裁判所に相当する)欧州司法裁判所に申し立てることができる。この期間は離脱から8年間とする。
○欧州司法裁判所の判断はEU加盟各国で法的な効果を持つが、個別のケースにおける最終決定権は英国の裁判所が持つ。
○離脱協定にある英国での市民権が適切に実行されるかどうかを確認するため、独立した監督機関が設置される。
○市民権が守られない疑いがあれば、同機関は英国内で対策を求めて法的措置を取ることができる。EU内では欧州委員会が加盟国の法令順守を監督する役割を持つ。