球場内でロボットが商品配送 楽天が5G実験
楽天子会社の楽天モバイルネットワーク(東京・世田谷)は15日、楽天球団の本拠地「楽天生命パーク宮城」(仙台市)で次世代通信規格「5G」を使った実証実験を報道陣に公開した。5Gを活用した自動配送ロボットによる商品の配達などを披露した。楽天は2019年10月に携帯電話事業に参入する予定。5G事業への参入にも意欲を示している。
楽天が報道陣に5G実証実験を公開するのは初めて。楽天モバイルネットワークの山田善久社長は「5Gは、エンターテインメントや物流など楽天のすべての事業分野にかかわる。現在準備を進めているネットワークは5Gを前提につくっている」と語り、現在、免許方針案が公表された段階の5G参入に強い意欲を示した。
自動配送ロボットのデモでは、ワゴンのようなロボットをネットワーク経由で遠隔操作し、商品を配送したい人の前まで移動させた。ロボットに搭載された高精細なカメラ映像を5G経由で伝送し、本人かどうかを確認したうえで商品を届ける様子をデモした。将来は球場内で注文した商品の配送などへの応用を見込む。
ドローン(小型無人機)のデモでは、球場内を飛行させて観客席の様子を撮影した。映像を5G経由で伝送し、あらかじめ登録した人物を顔認証で識別し、球場のバックスクリーンに表示した。
「例えば野球の試合の途中で、ドローンで撮影し認証した来場者の名前を、映像と共にバックスクリーンに表示したり、認証した来場者にポイントをプレゼントしたりするファンサービスが考えられる」と楽天モバイルネットワークの内田信行ネットワーク本部副本部長兼技術戦略部長は語る。
今回の5Gデモでは、基地局や基幹網にはフィンランドの通信機器大手ノキアの機器を使い、端末設備は米インテルの機器を使った。基地局は外野席上部に1局設置し、球場内の試合エリアをカバーできるようにした。周波数帯は日本でも5Gの割り当て周波数帯の一つとなっている28ギガ(ギガは10億)ヘルツ帯を使った。
楽天は19年10月に開始予定の携帯電話事業で、ノキアのほか新興企業である米アルティオスター・ネットワークスなどをメーカーとして採用した。一般的なサーバー上にソフトウエアで基地局や基幹網の機能を実現する「仮想化」技術をフルに活用し、設備コストを抑えたネットワークの構築に取り組んでいる。
内田副本部長は「他の携帯大手とは次元の違うトータルコストのネットワークができる」と自信を見せる。(堀越功)
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