中国ゲーム規制、業界に逆風 テンセント時価総額4割減
【広州=川上尚志】中国でスマートフォン(スマホ)向けゲームの規制が強まり業界に逆風が吹いている。3月から新作ゲーム発売の認可が止まり、ゲーム事業が主力のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)の展望を株式市場は不安視。同社が14日発表した7~9月期決算は2期ぶりに最終増益だったが、3月から時価総額は約4割減った。ネット空間の統制を進める当局に経営が左右される事態が続く。
テンセントの7~9月期の売上高は前年同期比24%増の805億元(約1兆3000億円)、最終損益は30%増の233億元。最終損益は市場予想を約3割上回った。
好調の要因が、ゲーム以外の事業の躍進だ。約10億人が利用する交流サイト(SNS)「微信(ウィーチャット)」を土台としたスマホ決済やネット広告、動画サービスや企業向けクラウド事業がそれぞれ好調だった。
一方でゲーム事業は4%減の258億元。パソコンゲームの利用者が減り、スマホゲームの規制も響いたとみられる。ただ売上高全体に占めるゲーム事業の比率は32%で、15年当初の約60%から半減。ゲーム以外の事業多角化が進み、全体の収益に貢献している。
ただ株式市場はテンセントのゲーム事業の先細りを懸念してきた。同社の時価総額はゲーム規制が強まる前の2月末時点で約5200億ドル(約60兆円)だったが、足元では約3300億ドルまで下がり、2000億ドル近い時価総額が吹き飛んだ。中国当局によるゲーム審査再開の見通しがたたず、事業の先行きを見込みづらいためだ。
当局がゲーム規制に動いた背景の一つには、スマホゲームの利用が若年層で急速に広がり、ゲーム依存が問題になってきたことがある。8月末には教育省など8つの政府部門が子どもの近視を問題視し、「未成年によるスマホゲームの利用時間を管理すべきだ」などの意見を含む対策案を公表、規制を強める方針を改めて示した。
こうしたなかテンセントも独自の対策に乗り出している。10月下旬から、主力ゲームの「王者栄耀」を対象に北京市や天津市などで未成年が利用する際に実名で登録する制度を開始。さらに1日の利用時間を12歳未満は1時間、12~18歳は2時間までにした。19年には同様の規制を自社系列のすべてのゲームを対象に実施するという。共産党機関紙「人民日報」はテンセントの取り組みについて「重要な一歩を踏み出した」と評価し、「ゲームメーカーは社会的責任を強化すれば明るい未来がある」と指摘する。
ただ、現時点では新作ゲームの審査再開がいつになるかは未定だ。これまでも何回も再開が噂されてきたが、ゲームの管理や審査の方法などで当局内部で意見の集約が進んでいないとみられる。
中国の習近平(シー・ジンピン)政権はネットの管理強化を矢継ぎ早に進めてきた。中国当局は4月に「今日頭条」など大手ニュースアプリ4社のダウンロードの一時停止を命令。18年1~9月にはネット上の「違法・不適切情報」として通報された有効件数が、前年同期に比べ7割増え6千万件を超える。スマホゲームへの管理も強まる方向の見通しで、新作ゲームの審査が再開されたとしても、政策や当局の意向に業界が振り回されるリスクは残りそうだ。
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