南シナ海の行動規範「3年以内に」 中国首相
【シンガポール=永井央紀】中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は13日、訪問先のシンガポールで演説し、南シナ海の紛争を回避するための「行動規範」策定に関する東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との交渉を「3年以内に完了させたい」と述べた。中国の最高指導部が交渉妥結の時期を示したのは初めて。対米関係の緊張を受け、早期合意を求めるASEANに配慮した。
行動規範の策定交渉は2013年に始まったが、南シナ海で軍事拠点化を進める中国が慎重姿勢を崩さず長期化している。中国の王毅国務委員兼外相が10月末、訪問先のフィリピンで2021年までにまとめたい考えを示し風向きが変化。中国共産党序列2位の李氏が期限を明言したことで前進が明確になった。
ただ、3年という期限には交渉を有利に進めたい中国の思惑がうかがえる。交渉のASEAN側議長国は8月にシンガポールからフィリピンに交代し、2021年半ばまで務める。ドゥテルテ大統領の任期は22年6月まで。中国との協調を重視するドゥテルテ氏の政権基盤が固いうちに、フィリピンとの連携によって中国の意向を反映させる狙いとみられる。
李氏の発言には行動規範に法的拘束力を持たせるか否かという交渉の焦点に関する言及もなかった。中国とASEANは8月に規範の「たたき台」を作成したとしているが、内容は各国が提出した意見を1つの文書にまとめただけ。具体的な調整はまだ進んでいない。