ソフトバンクG、投資会社に 通信子会社12月上場
AI開拓にリスクも
ソフトバンクグループ(SBG)が事業の軸足を投資に移す。東京証券取引所は12日、SBGの通信子会社の上場を承認した。過去最大となる2兆6千億円強の調達資金を元手に、先端技術分野で先行する世界の新興企業への投資を加速する。人工知能(AI)など次世代の有望企業を囲い込む投資会社への変革を目指すが、浮き沈みの激しいデジタル分野の投資はリスクも伴う。
SBGの通信子会社ソフトバンク(SB)は12日、東証の承認を受け新規株式公開(IPO)の詳細を発表した。1株あたりの想定売り出し価格は1500円で、時価総額は7兆1800億円を見込む。
12月10日に価格を正式に決め、19日に上場する。上場市場は特定されていないが、東証1部になりそうだ。
全額出資しているSB株の最大36.8%を市場に売り出す。予定調達額は1980年代後半のNTT(約2兆3千億円)を上回り過去最大となる。世界でも14年に米株式市場に上場した中国・アリババ集団(当時の為替レートで約2兆7千億円)に近づく。
SBGは今回の上場で携帯子会社の経営を独立させると同時に、本体は投資会社としての性格を強める。同社が目指すのは、あらゆるモノがネットにつながるIoTやAIなど、デジタル分野に特化した投資会社だ。
投資先はライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズや半導体設計の英アーム・ホールディングスなど幅広い。いずれもシェアサービスや自動運転、電子決済など既存の事業モデルを覆す可能性を秘める分野だ。
SBGは投資先を連携させることでデータ収集や技術面で相乗効果を生み、先端分野で強い影響力を持つプラットフォーマーとしての地位獲得を狙う。孫正義会長兼社長は「各分野で強いビジネスモデルと技術を持つ企業の群れをつくる」と語る。
投資会社としての運用規模は巨額だ。サウジアラビア政府と共同出資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の運用額は10兆円規模と、全世界のベンチャーキャピタル(VC)の投資総額とほぼ同じ。9月末までに世界38社に計281億ドルを投じ評価額は358億ドルに増えた。
SBGによるアリババへの出資分なども含めると、投資先の評価額は2千億ドルを超えるとの試算もある。
ただリスクも膨らんでいる。SBGの連結有利子負債は18年9月末時点で18兆円近くに上り、利払い負担は18年3月期に約5100億円に達した。格付けは投機的水準だ。これまで歴史的な低金利によるカネ余りを背景に資金を吸い寄せた側面もあるが、金利は上昇傾向にあり利払い費の増加も懸念される。
デジタル分野は競争環境の変動が激しい。17年3月期にはインドの新興2社の企業価値が下がり約1600億円の評価損を計上した。SVFに出資するサウジアラビアは記者殺害事件で世界的な批判が強まる。通信会社として成長したSBGは、様々なリスクを抱えながら投資会社への転換に踏み込む。