米朝、首脳再会談の見通し立たず 南北協力にも影
【ソウル=恩地洋介】8日に米ニューヨークで予定していたポンペオ米国務長官と北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長の会談が延期になった。トランプ米大統領の不在が分かり、北朝鮮側が延期を申し入れたようだ。トランプ氏は年明けの米朝首脳会談をめざしているが、非核化措置を巡る溝は埋まっていない。米朝交渉の遅れは、金正恩(キム・ジョンウン)委員長のソウル訪問や、南北協力事業にも影響を及ぼす。
金英哲氏の訪米は5日に米国務省が発表した。しかし、7日に金英哲氏は経由地の中国・北京空港に姿を見せず、同省がその後、延期を発表した。韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は8日の国会答弁で、北朝鮮側が「互いに忙しいので延期しよう」と米国に伝えたと明かした。米側に確認したという。
5月にも訪米した金英哲氏は、トランプ氏からワシントンに招かれる異例の厚遇を受けた。米メディアによるとトランプ氏は9日からフランスを訪れる予定で、金英哲氏との面会は困難だったという。今回も金正恩氏の親書を渡そうと計画していた可能性がある。
米朝間の協議は約1カ月間滞っている。ポンペオ氏が訪朝して金正恩氏と会ったのは10月7日だった。米側はその後の交渉をビーガン北朝鮮担当特別代表と崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の実務者協議に委ねようとしたが、北朝鮮側が応じてこなかった。
トランプ氏は7日の記者会見で、2回目の米朝首脳会談について「来年早々かもしれない」と語った。ただ、そのハードルは依然として高い。金正恩氏は10月、ポンペオ氏に対して豊渓里の核実験場や、東倉里のミサイルエンジン試験場への「査察」を受け入れると伝えたが、査察団の権限などで折り合えていない。
金正恩氏はこの時、見返りとしてかねて主張してきた朝鮮戦争の終戦宣言に加え、経済制裁の解除を要求。最近はメディアなどを通じた露骨な主張を続けている。朝鮮中央通信は、経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」の復活を示唆する記事を配信するなど、米国を揺さぶろうとしている。
米朝協議の足踏みと連動し、南北関係の行方も展望が描きにくくなる。金正恩氏と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9月の首脳会談で、金正恩氏による年内のソウル訪問を約束した。米朝交渉の進展を前提に、南北の経済協力に弾みを付ける狙いがあったはずだが、思惑は外れた。
トランプ氏は11月7日、北朝鮮への経済制裁を巡り「喜んで解除したいが、そのためには北朝鮮が(米国の要求に)応じなければならない」とも述べた。米国が目を光らせている限り、南北は共同事業を進められない。12月初旬までには鉄道連結事業の着工式を行うことになっているが、まだ日程は決まっていない。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。