米中間選挙、鴻海の巨額投資に逆風 推進派州知事が敗北
【台北=伊原健作】台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が米中西部ウィスコンシン州で進める100億ドル(約1兆1千億円)規模の投資計画に、逆風が吹いている。米中間選挙で巨額支援を含む鴻海との契約の見直しを主張する民主党候補が、共和党から州知事の座を奪取したからだ。トランプ大統領の「製造業の米国回帰」政策に呼応して生産網を再編する戦略が早くも揺さぶられている。
6日投開票の同州知事選では民主党のトニー・エバーズ氏が、2011年から現職の共和党、スコット・ウォーカー氏を破った。鴻海は6月、トランプ氏やウォーカー氏を招き同州で計100億ドル規模を投じる液晶パネル工場の起工式を開催。選挙に向けた後押しを鮮明にしたが、結果は伴わなかった。
鴻海は投資により現地で1万3千人の雇用を生み出すと主張。州政府からの減税などで計40億ドル近い支援を得るはずだった。ただ補助の金額から単純計算すると雇用1人当たり最大約3千万円超のコストが発生し、米メディアでは「非合理」との批判も出ていた。エバーズ氏は9月に地元メディアに対し「ひどいディールだ」などと語り、契約見直しを示唆した。
鴻海は8日に「投資計画は不変だ」との声明を発表。エバーズ氏の当選を「心から祝福する」とし、「協力を期待する」と呼びかけた。郭台銘董事長は計画継続に向け、エバーズ氏との早期の接触を目指すとみられる。