監督だけの責任じゃない 巨人や阪神、中日の低迷
今年のプロ野球はソフトバンクの日本シリーズ連覇で幕を閉じた。セ・パ両リーグとも打高投低のシーズンだった。西武打線は圧倒的な破壊力でパを制し、セを3連覇した広島打線も相変わらずよく打った。
打者の技術は投手よりも伸ばしやすい。体が資本の投手は好きなだけ投げ込めるわけではないが、打撃マシンを使えば打者は納得のいくまで打ち込むことができる。練習量は必然的に差がつく。「飛ばないボール」といわれた統一球がなくなり、いまのボールは飛距離も出る。投手には受難の時代といえる。「野球は投手」の常識が変わっていくのか今年が特殊だったのか、来季以降も注視したい。
セ・リーグでは3人の監督の退任が決まった。まずは巨人。ブルペンに上原浩治、沢村拓一が加わった今季、私は優勝候補に挙げていたのだが、故障者が続出し、Aクラス確保が精いっぱいだった。
高橋由伸監督の3年間を振り返ると、ベストな布陣で戦えない期間が多かった。けが人に加え、選手の野球賭博などスキャンダラスな話題もチームを揺らした。正直、高橋監督がこのような終わり方をするとは思わなかった。人柄がよくて、オーラもある。野球については絶対に日の目を見る人だと信じていた。本人も悔しいだろうが、巨人が4年連続で優勝を逃したとあっては、ケジメをつけざるを得なかったのだろう。
阪神の金本知憲監督も3年で退くことになった。投手陣がそろい、開幕前には監督自身も「この3年で最強」と手応えを口にしていたが、17年ぶりの最下位に沈んだ。高山俊、大山悠輔、中谷将大ら主軸を期待された若手が一本立ちできず、福留孝介、糸井嘉男といったベテランが目立ってしまう状況は今年も変わらなかった。疲れが出やすいベテランは使い続けるのが難しい。彼らが休んだり、けがをしたりすると、チーム力は目に見えて落ちた。金本監督はいろいろな若手を起用したが、もう少し人数を絞って使い続けた方がよかったかもしれない。1軍半レベルの選手が日替わりでオーダーに名を連ねていると、相手投手としては正直「楽だな」と感じる。
もっとも、若手が育たないのは監督だけの責任ではない。選手の適性を見極め、育つ環境を整備できなかったという点で球団全体の責任だ。高橋、金本両監督とも指導者経験がないまま監督に就いたのがよくなかったという声も聞くが、私はそうは思わない。チームを運営するのは監督一人の仕事ではなく、周りのスタッフとの共同作業だ。周囲が十分なサポートをできなかったのは残念だった。
私の古巣の中日でも森繁和監督が退任する。今年の敗因は投手に尽きる。チーム打率はリーグ2位と打線は健闘したのだが、チーム防御率は4.36とリーグワースト。かつての「投手王国」は見る影もなく、信じられない失態だ。投手の頑張り次第では上位争いもできたのだから、もったいない。近藤真市、朝倉健太の両投手コーチが責任を取る形で退団したのはやむを得ない。
しかし、来季に向けては大きな楽しみもある。ドラフトで4球団が競合した根尾昂(大阪桐蔭高)を引き当てたのに続き、2位以下でも期待の膨らむ選手を指名した。ドラゴンズ史上でも3本の指に入るドラフトだったのではないだろうか。
私はドラフト前、大阪桐蔭高まで行って根尾を見てきた。甲子園でのマウンド上の姿を見ると投手としてもやれそうだと考えていたが、普段の練習での躍動感を目の当たりにするとやはり内野手がベストな選択だと感じた。ゴムまりのようなバネは桑田真澄さんと立浪和義さんを足して2で割ったような印象を受ける。野球センスという点では2人にかなわないかもしれないが、伸びしろはすごくある。すべては春季キャンプを見てからだが、かつて星野仙一監督がルーキーの立浪さんを使い続けて一人前にしたように、早い時期から1軍で使ってスター選手に育ててほしい。
与田剛新監督には「正攻法の野球」を期待する。選手起用や試合の戦術において奇をてらうのではなく、見ている側が納得できる王道をいってほしい。しっかりとした野球さえできれば、決して弱いチームではないのだから。
(野球評論家)