住まい×IT 起業家育成へ不動産・建設7社が連携
デジタルガレージは8日、国内不動産・建設大手7社と連携し、スタートアップ企業の育成プログラムを始めると発表した。各社の資産を持ち寄り、スタートアップが新技術を実証実験する場を提供。IT(情報技術)を活用して住まいや暮らしを便利にする「レジテック(Residential Technology)」の分野で新事業を創出する。
プログラム名は「Open Network Lab Resi-Tech」。三井不動産、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、東急グループ、竹中工務店、コスモスイニシアの大手7社が参加する。KDDIとカカクコムも通信環境の提供などで運営に協力する。
8日から参加するチームの募集を始める。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術を使って住環境を最適化する事業や住民の睡眠データなどを収集して生活を豊かにするサービスなど幅広い分野を想定する。
対象は創業期のスタートアップや、「アーリー」「ミドル」と呼ばれる成長初期・中期の企業。海外のスタートアップも誘致する。書類選考などを経て2019年3月までに10~15社程度の企業を選抜。同年4月から3カ月間をかけて事業戦略の磨き込みや大手各社の資産を使った実証実験などを進める。
資金提供も行う。創業期の企業はデジタルガレージが出資。成長初期・中期の企業は19年7月をめどに開催予定の報告会「デモデイ」を経て、大手各社から資金調達ができる機会を設ける。
新事業創出のため大企業がスタートアップと協業するプログラムは増えているが、同じ業界のライバル企業同士が手を組むのは珍しい。野村不動産ホールディングスは今年に入り自社でもスタートアップへの投資を始めたが、「同業他社と案件が重なるケースもあった」(田辺邦彦経営企画部長)という。「他社が提携しているからといって遠慮するのではなく、協力してスタートアップを大きく育てたい」と話す。
デジタルガレージは10年からスタートアップの育成プログラムを運営する。累計で108社のスタートアップが参加し、参加企業の約60%が資金調達に成功している。18年5月には製薬大手各社とバイオ・健康分野でもスタートアップ育成を始めている。佐々木智也執行役員は「今後は家電や住宅設備メーカーにも参加を呼びかけ、新事業を創出する共通プラットフォームをつくりたい」と話している。(鈴木健二朗)