日韓、通商でも摩擦 造船巡りWTO提訴へ協議 徴用工に続き
政府は6日、韓国が経営が悪化した自国の造船大手に過剰な公的支援をするのは国際的な貿易ルールに違反するとして、世界貿易機関(WTO)への提訴の前提となる2国間協議を同日付で要請したと発表した。協議は決裂するとみられ提訴に発展する可能性が高い。新日鉄住金(旧新日本製鉄)に元徴用工への損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決などに続く新たな火種となる。
発表文で「WTO補助金協定に違反する疑いが強い」と訴えた。石井啓一国土交通相は同日の記者会見で「韓国による自国造船業界への公的支援は供給過剰問題の是正を遅らせる恐れがある。様々な機会に韓国側に懸念を伝えてきたが是正の動きはない」と批判した。
国交省によると、韓国政府は経営が悪化した「大宇造船海洋」に約1兆2000億円の公的資金を投入した。政府系金融機関による造船大手向けの保証も手厚い制度になっている。日本側はこうした公的支援が船舶建造の安価な受注につながり市場価格をゆがめているとして是正を求めてきた。10月には国交省海事局と韓国産業通商資源部との局長級協議を開いたが物別れに終わっていた。
WTOのルールでは要請から30日以内に2国間協議が始まる。要請から60日がたっても解決しない場合、WTOの紛争解決機関に案件を審理する小委員会が日本の求めに応じて設置される。小委員会は原則として6カ月以内に最終報告をつくり、WTO協定に違反するかどうか判断する。
日本は原子力発電所事故に伴う日本産の水産物の輸入規制や日本製のステンレス鋼への韓国の反ダンピング(不当廉売)関税など、すでに3つの案件についてWTOで韓国と係争中だ。今回も提訴すれば4件目となる。
日韓関係は急速に冷え込んでいる。10月中旬の韓国・済州島の国際観艦式では、海上自衛隊が自衛艦旗である旭日旗の掲揚を拒否され参加を見送った。同月下旬には韓国の超党派議員団が島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸した。30日の大法院判決は戦後の日韓関係の基礎を覆しかねないとして日本側が強く抗議し、対応を求めている。
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