不正漁獲のイカ輸入で損失 年間最大469億円と分析 供給過剰で価格押し下げ
違法操業などで不正に漁獲されたイカの輸入が供給過剰と価格の押し下げを招き、国内の漁業者が2016年までの26年間に1年当たり最大469億円の損失を被ったとの試算を、東京海洋大の松井隆宏准教授らのチームが6日までに発表した。
違法漁業や、漁獲量を水産当局に報告しない漁は、世界的に問題になっている。欧州連合(EU)や米国は、多くの魚種の輸入時に漁獲証明書の提出などを義務付けているが、日本は大西洋クロマグロなど一部に限られ、対策は不十分。主要な天然水産物の輸入量の3割程度が不正な漁獲との指摘もある。
チームは、日本がイカを多く輸入している中国とタイ、ベトナムに着目。不正に水揚げされたイカの輸入がゼロになった場合の影響を分析した。
すると、供給量が減って品薄になるため国内で水揚げされたイカの価格が上がるなどして、1990~2016年の本来の水揚げ額は1年当たり243億~469億円多かったはずだとの結果になった。
国内でもアワビやウナギの密漁や無報告の漁業が横行し、対策の遅れが問題視されている。松井准教授は「輸入規制の強化に加えて、国内でもトレーサビリティー(生産流通履歴)を導入するなど徹底した対策が必要だ」と訴えている。〔共同〕