五輪ボランティア、「無償前提」に違和感
COMEMOで議論
日本経済新聞の投稿プラットフォーム「COMEMO」が「五輪運営、ボランティア活用はなじむのか」をテーマに読者からの意見を募集したところ、無償のボランティアを五輪運営の前提としていることに違和感を覚えるとの意見が目立ちました。一方でボランティアとして五輪を経験すること自体には肯定的な意見も寄せられました。
「無償・長期間の拘束」に疑問を示す意見が目立ちました。クラウンアーツ最高経営責任者(CEO)の麻生大貴氏は「自分の生計を考慮した結果、参画を断念せざるを得ない人が多いのではないか」と指摘しました。
みんなの社会科講師の匂坂三郎氏は「10日以上、8時間程度が応募条件ならばフルタイムの勤め人は厳しい。いわゆる主婦とか、学生とか、現状のままではできる人は限られてしまう」としました。
Always river代表の常川健二氏はボランティア減税を提案しました。「今後の予算について不足分を国民の善意に頼ざるを得ない状態があるとすれば国家としては、有形無形の支援について補償を行う責任があるのが当然」と指摘しました。
そもそも五輪の開催について、明確なメッセージが伝わっていないとの指摘もありました。「平和の祭典」とされた1964年の東京五輪に比べメッセージが伝わりにくいという指摘です。会社役員のbasementapeさんは現在の我が国は2008年の北京のように、オリンピックが開ける国になったことをアピールする必要はないし、12年のロンドンのように欧州の一部ではない英国を声高に主張する必要もないと説明。「私たちの頭の中は、『いったい何のためにオリンピックをやるのだろう?』という疑問でいっぱいなのだ」との声を寄せました。
五輪開催について、国民が幅広く共有できる目的が不明確なことが、ボランティアの参加をめぐる議論の根底にあるのかもしれません。
ボランティア募集開始の前後から、SNS(交流サイト)などで「やりがい搾取」などと批判の声があがったことが、この投稿を募集したきっかけでした。大会組織委員会によると、競技会場内や選手村などで活動する「大会ボランティア」は10月22日までに約5万2千人が応募したそうです。組織委は「順調」とみています。ボランティアが納得して働けるよう、東京都も組織委も、大会の意義や予算の使われ方など、より丁寧に説明していく必要があると感じました。(社会部次長 岩村高信)