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フィギュアシーズン本格化 ルール改定の影響は?

プロスケーター・振付師 鈴木明子

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フィギュアスケートもいよいよ本格的にシーズンが始まった。まだ、チャレンジャー(CH)シリーズとグランプリ(GP)シリーズ3大会が終わったばかりだが、ルールが大きく変わって「男子は慌ただしい」「女子は採点が厳しくなった」という印象だ。

男子はフリーの演技時間が4分30秒から4分に短くなった。だが、減った要素はジャンプ1つだけ。プログラムのバランスをどうとるか、振付師もまだ勘所をつかみ切れていないのだろう。そのうち「慌ただしい」と思うことはなくなると思う。ただ、このルール改定で、ジャンプに助走(の時間)をかける選手は苦労すると思う。平昌五輪6位のビンセント・ゾー(米国)や、滑りが美しく日本でも人気のジェイソン・ブラウン(米国)らがこのタイプかもしれない。

羽生結弦(ANA)、宇野昌磨(トヨタ自動車)の2人は問題ない。特に羽生は強いだろう。構えずにひょいっとトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)くらい跳んでしまう。リンク半分の広さがあれば、3回転ジャンプの要素を2つくらい楽々とこなせる。今季のフリープログラムの3回転ループは短い間隔でポンと跳んでいる。その分、ステップやコレオシークエンスに時間がかけられるということ。今季からコレオシークエンスの基礎点が3点になり、加点も11段階評価になった。素晴らしいスケーティングで「+4」「+5」の加点を得たら、3回転サルコー並みかそれ以上の得点源になる。ここに力を入れる選手は、男女かかわらず増えてくると思う。

採点厳しく、ミスに容赦なし

ミスに容赦ないというか、全体的に採点は厳しくなったと思う。ジャンプの回転不足の取り方に端的に表れている。女子だけでなく、男子もかなり取るようになった。「昨季だったらグレーゾーンで、OKだったのではないか」というジャンプは、ことごとく回転不足になっている気がする。

ジャンプで「+4」「+5」の加点をもらうには「飛距離と高さ」があり「よい姿勢で踏みきって着氷」し、「流れ」があることが前提とルールブックに書いてある。これをクリアできる選手はそう多くない。「難度も大切だが、クリーンなスケートという基本をおろそかにしないでほしい」という、国際スケート連盟(ISU)の技術委員会のメッセージだろう。演技構成点も転倒などの重大な過失が1つでもあると10点満点が出ないし、2つ以上出ると9点、9.5点を出さないと明記している。

羽生のシーズン初戦のオータム・クラシックでは思ったほど「+3」以上の加点がつかず、「+4~5」を出すのはかなり高いハードルなのかと感じたが、フィンランド大会では「+4」「+5」がつく評価だった。

宮原らジャンプの改良に本腰

まだシーズン序盤で審判員も試合ごとに会合を開いて、採点について模索している段階だと思う。ただ、厳格化の方向性は変わらないだろう。ジャンプの質を高めるため、宮原知子(関大)やエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)は改良に本腰を入れて取り組んでいる。そして、五輪の翌シーズンは新ルールの追い風を受けて新星が登場する傾向があり、その一人が今季シニアデビューした山下真瑚(中京大中京高)だと思う。

トリプルアクセルを跳ぶ同学年の紀平梨花(関大KFSC)ほど話題になっていないが、山下は昔からミスが少なく、大崩れしない選手。もともとジャンプに高さも幅もあって、癖がない。2位に入ったGPデビュー戦のカナダ大会で、ジャンプだけでなく、スピンやステップでも満遍なく加点をもらっていた。まだジュニア世代の15歳なのに演技構成点でも9点台を出す審判員もいた。1試合だけでなく、ロシア大会(11月16~18日、モスクワ)、全日本選手権(12月20~24日、大阪)とコンスタントにいい演技を続けていれば、面白い存在になりそうだ。

もっともフィギュアスケート界の4年間は変化が激しい。特に女子選手は成長に伴う体形変化もある。選手がどのようにルールに適応して、新しいスケートを見せてくれるのか楽しみにしていきたい。

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