三菱商事、若手を幹部登用 20年ぶり人事制度刷新
三菱商事は2日、2022年3月期までの中期経営戦略を発表した。約20年ぶりに人事制度を刷新し、入社10年目程度の若手でも幹部に登用する仕組みを導入する。デジタル化の進展など経営環境の変化に対応し、年齢にかかわらず最適な人材が事業を指揮できるようにする狙いだ。22年3月期の連結純利益は9000億円(18年3月期は5601億円)を目指す。
子会社のトップや本社で実務を取り仕切る課長級になるには、早くても入社から20年程度かかっていた。10年目までに経営に必要な能力を身につけさせ、その後は年齢とは関係なく能力に応じて登用する制度に改める。各事業部門の幹部ポストは出身母体にこだわらず、能力が高い人材を起用できるようにする。
社員ごとに業務の目標を定め、難易度と成果に応じて報酬を増減させる制度も導入する。成果によっては給与を現在の5割以上増やす。
会社の成長が社員の報酬に反映されるように、一定以上の人材には退職時に株式を付与する。制度の詳細を詰め、19年4月の導入を目指す。記者会見した垣内威彦社長は「実力主義と適材適所を徹底する」と話した。
経営環境の変化に対応するため19年4月に組織も見直し、現在は事業別に7つに分かれたグループを10個に再編する。「天然ガス」や「自動車」など6つの事業は収益の柱と位置づけ、さらに利益を増やすことを目指す。「石油・化学」や「産業インフラ」など4グループは業界再編や新たなビジネスの創出を通じ、成長事業を生み出す。
従来は事業ごとの縦割り組織で部門間の連携が十分にとれていないケースもあった。社長直下と各グループに部門横断で事業計画を立案する担当者を置く。垣内社長は「産業と産業の境目がなくなってきており、グループ間の壁を薄くする必要がある」と説明した。
人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の活用など、デジタル化への対応も強化する。最高デジタル責任者(CDO)を新設し、その下に「デジタル戦略部」を置く。各グループと連携し、データを活用したビジネスや消費者向けネットサービスへの参入を検討する。
総合商社には商品取引や卸売りといった既存のビジネスがデジタル化で脅かされる危機感がある。三井物産や丸紅はすでにCDOを置き、スタートアップなどへの投資を進めている。三菱商事は資源ビジネスや小売業への進出を通じて商社トップの業績を誇るが、デジタル対応では目立った動きが少なかった。
22年3月期の連結純利益目標の9000億円について、垣内社長は「既存のビジネスの延長線上で達成できる」と語った。利益の積み上げで3兆円程度の投資余力が生まれる見通し。「中期経営戦略の次の3年を見据えて使い道を決める」(垣内社長)という。
(村松洋兵)