「スカイラン」山駆け登る魅力広がれ、世界に挑戦
山岳地帯の急斜面を駆け登ったり降りたりするタイムを競う欧州発祥のスポーツ「スカイランニング」が日本でも裾野を広げている。9月には男女16人の日本チームが英スコットランドでの世界選手権に挑戦し、国別対抗で26チーム中4位に入った。選手は本場の厚い壁を実感した一方、険しくも美しい山の頂を踏む魅力を再確認した。
「一つとして同じ山はなく、人間のように個性があって飽きない」。松本大さん(34)=長野県上田市=は、群馬県嬬恋村出身で高校時代の山岳競技で優勝した。その後、単身で挑んだ海外のスカイランニングレースで選手への手厚いサポートを目の当たりにし、2013年に「日本スカイランニング協会」を設立。国内大会のシリーズ戦の創設や中学、高校生選手の育成などに当たり、今回も日本チームを率いた。
世界選手権は2年ごとに開催。今回は種目ごとのポイントを合算する国別対抗で、前回の3位を上回る優勝を目指した。箱根駅伝の山上り区間で活躍し、コモディイイダ陸上競技部の五郎谷俊さん(25)=埼玉県朝霞市=ら、松本さんが「最強メンバー」という陣容で臨んだ。
会場となったキンロックレベン周辺の山々は岩がむき出しの地形で、大会中はあられ交じりの寒風。海外レースで上位に入ったことのある日本選手も多かったが、低体温症や沼地のようなコースに苦しみ、優勝のスペイン勢などに屈した。
日本の伝統的な山岳レース「富士登山駅伝競走大会」で活躍する自衛隊の新牛込崇史さん(32)=静岡県御殿場市=は「日本なら中止になるような突風でも、欧州の強豪選手は軽々と越えていった」。松本さんは「悪天候もぬかるむ足元も、山では当たり前の条件の一つ。経験不足だった」と振り返る。
優勝に届かず悔しさが残る選手たち。平地での走力だけではなく、悪天候への対応力、滑りやすい場所でも瞬時の判断で駆け降りていく技術を目の当たりにして「スカイランニングの厳しさと面白さを学んだ」という声が相次いだ。
松本さんはレースの開催を通じ、各地に残る登山道の継承にも取り組む。「山は地域の文化とつながっている。スコットランドでは自然とウイスキーが飲みたくなった。多くの山や山岳信仰がある日本では、競技が広がる可能性がある」と決意を新たにしている。
〔共同〕