オリックス・西村新監督 「下克上」再現への期待
「優勝争いできるチームにするのが私の役目」と、オリックス新監督の西村徳文(58)は気負った様子もなく言った。2018年は首位西武に21.5ゲーム差の4位。3年間ヘッドコーチを務めたから状況は把握している。監督就任の抱負は景気づけか、それとも"下克上"を果たした実績が言わせたものか。
西村が監督初体験だった10年のロッテはパ・リーグ3位から日本一へ駆け上がった。日本ハムと最後まで争ったクライマックスシリーズ(CS)出場権は、0.5ゲーム差でつかんだ。
2位西武に連勝して進んだソフトバンクとのCSファイナルステージでは、1勝3敗(相手のアドバンテージ1勝を含む)の窮地から3連勝。中日と対戦した日本シリーズは4勝2敗1分けで制した。
それで西村には不思議な力を発揮する、下克上の幻影めいたものが付きまとうようになった。ロッテひと筋に16年の現役生活での多彩な足跡が、幻影を現実のものと思い込ませる役割を果たしている。
主に1番を打つ、快足巧打のスイッチヒッターだった。入団4年目の1985年に二塁手として、90年には外野手としてベストナインに選ばれ、ゴールデングラブ賞も受賞した。この間86年から4年連続で盗塁王、90年には打率3割3分8厘で首位打者のタイトルをとった。
ファンもメディアも、現役時代の姿と、監督としての手腕を重ねて期待しがちだ。だが、主役は選手。監督西村が輝くかどうかは選手次第だ。近年のオリックスは故障者だらけだった。18年は主砲・吉田正尚が3年目で初めてフル出場したが、まさに孤軍奮闘だった。
投の金子千尋、打のT―岡田、守の安達了一が各部門のリーダーとして奮闘すべきだが、そろって故障がちで、チームの士気は上がらなかった。「彼らもまだ老け込む年ではない」と、現役時代に"練習の虫"だった西村は鍛え直しを明言した。
打線強化と二遊間の固定は、西村が真っ先に手をつけるべきことだろう。18年には無得点試合が16もあった。走れる選手がいないわけではない。機動力駆使で得点力アップを図れるか。二遊間は若手の福田周平、大城滉二の飛躍に期待だ。
西村はおとなしく、積極性に欠ける選手が多いのも、躍進を阻む原因に挙げた。これは、補強に対する球団の姿勢についてもいえる。堅実な経営戦略に一理はある。だが、地味な補強では勝てない現実がある。新監督に下克上の手腕を求めるだけでは無理があろう。=敬称略
(スポーツライター 浜田昭八)