文化勲章の山崎正和さん 戯曲や評論、多彩に執筆
劇作家として「世阿弥」などの戯曲を執筆。森鴎外らの小説に表れる時代精神を不機嫌と評して分析した文芸評論、消費社会の到来を読み解いた「柔らかい個人主義の誕生」などの社会評論、さらに文明論、人間論と半世紀以上、多彩な文章を書き続けてきた。
大学教授や学長で研究や教育を担い、サントリー文化財団などで学術文化の振興にも携わった半生を「四足のわらじを履いてきた」と表現する。
文化勲章は「この道一筋」の人に多く贈られてきたとし、自身の受章の意味を「社会の変化を象徴している。下の世代には、私と似たような多彩な活動をする人が増えているから」と評した。
21歳で書いた戯曲が演劇評論家でもあった京都大教授に褒められ、勢いで作品を書き始めた。「後は乗せられてここまで来た。偶然と運。編集者などのキャッチャーにボールを投げ込んできただけ」と謙遜する。
近年、全戯曲集や哲学的な思索をまとめた「リズムの哲学ノート」を刊行。積年のテーマの集大成とも見られるが、「依頼がある限り書き続ける」。ドイツの哲学者に関する「驚かれるような」論考を執筆中という。(劇作家・評論家、84歳)