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SNSいじめ、アプリ「STOPit」で止めろ

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

後を絶たない子どものいじめ問題。交流サイト(SNS)が陰湿化を助長していると指摘される中、解決の糸口をSNSに求める動きが教育現場で広がっている。スタートアップのストップイットジャパン(東京・中央、谷山大三郎代表)の匿名相談アプリを採用する自治体が急増、大手企業も動き出した。SOSを発する子供たちの救いの手になるのか。

チャット形式で匿名相談

生徒「友達に嫌がらせをされました」

相談員「連絡ありがとうございます。どんなことをされたのかもう少し詳しく教えてください」

生徒「『きもい』と言われて他の友達のLINEをブロックしたり、秘密をLINEでみんなにばらされたりしました」

相談員「嫌な思いをしたのですね。誰かに相談しましたか」

これはストップイットジャパンの匿名相談アプリ「STOPit(ストップイット)」を導入した千葉県柏市の実例だ。相談員は教師への相談を勧め、大きな問題になる前に決着したという。

子どもの利用が前提のストップイットの使い方は簡単だ。学校はアプリのログインに必要なアクセスコードを紙に印刷して生徒に配る。啓発用のポスターも校内に張る。生徒は自分でスマートフォン(スマホ)にアプリをダウンロードする。相談は、若者が慣れ親しんでいるメッセージアプリと同じチャット形式で行われる。

子どものSOSの受け手は、事前に研修を積んだ教育委員会の相談員や委託先の外部相談員などだ。やりとりは匿名だがアクセスコードで学校と学年は特定できる。生徒が望む場合は学校に注意を促し、望まない場合は学校に報告はいかない。ただし、暴力や自殺をほのめかすような緊急性を要する事案は別だ。生徒の許可無しに学校などに連絡し、すぐに対策を取ってもらう。

柏市は2017年5月に自治体として初めてストップイットを採用し全中学校に導入した。教育委員会の生徒指導室長だった宮武孝之氏(現柏市立酒井根中学校校長)が中心となり、「民間SNSサービスの導入は前例がない」と渋る市の予算編成部署を説き伏せた。

17年度の相談件数は133件で、並行して行っている電話とメール相談の約9倍に達した。18年度の相談件数は10月中旬時点で昨年を超えている。同市少年補導センターの長谷川正一所長は「直接話すのを嫌がる現代の中学生の使い勝手に合っている」と分析する。

ストップイットは柏市を契機に他自治体でも導入が広がる。18年10月中旬時点で岡山県や名古屋市、京都市など11自治体が採用、年内にもう2自治体が採用予定だ。私立の中学校・高校では先行して利用が広がっており、生徒数の総計で約6万1000人がアクセスできる「SOSのインフラ」に育ちつつある。

目立つ子どもの自殺 対策待ったなし

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では2016年度のいじめ認知件数が前年度比4割増の32万3143件で、3年連続の増加となった。同省は件数急増の背景を「教育委員会にいじめ対策の説明会をするなど、認知強化の取り組みが進んでいるため」とするが、いじめに歯止めがかかっていない状況は明かだ。

実際、ここ数年、いじめによる子どもの自殺が目立っている。18年6月に新潟県で高校3年生の男子生徒が自殺した事件では、県教育委員会が男子生徒がSNS上でいじめを受けていたと認定した。学校では男子生徒が自殺する1週間前にいじめの有無を確認するアンケートを実施していたが把握できなかった。

対策は待ったなしで、スタートアップだけでなく中堅IT(情報技術)企業や大手企業も動き始めた。未成年者向けなどに特定サイトへの接続を止めるフィルタリングソフトを提供するデジタルアーツは、アプリでSNSいじめなどネットトラブルを体感できる無料アプリを提供。「子どもや保護者自らが危険を回避する知識を身につけてもらいたい」とする。

トランスコスモスはLINEなどと全国SNSカウンセリング協議会(東京・港)を17年末に設立した。文科省が北海道や山形県など全国31自治体で実施する「平成30年度SNS等を活用した相談事業」の一部を受託し、LINEによる相談事業を実施中だ。

LINE上で匿名で専門相談員に相談でき、緊急時には教育委員会やいじめ問題を扱う地域のNPO法人などと連携する。同相談事業の18年9月時点の相談件数は5602件となっている。

トランスコスモスは主力事業の一つがコールセンター事業で、顔の見えない顧客とのやりとりや分析などにノウハウを持つ。これがチャット相談でもいかせるという。

さらに東京大学や京都大学の研究室と共同で匿名化したいじめ相談のやりとりの履歴データを解析し、カウンセラーの相談技術向上などに役立てる研究を進めている。三川剛上席常務執行役員は「いじめそのものをテクノロジーで解決することは難しい。一方でSNSだからこそより多くの相談者の声を集められるなどできることは多い」と指摘する。

もっとも、これらの取り組みのほとんどは、公的機関の補助金事業や企業の社会的責任(CSR)活動の費用で賄われている。子どものいじめ対策で蓄積したノウハウを、企業のハラスメント対策事業に転用するといったことも考えられるが、利益追求型のビジネスとしては成立しにくい。

だからこそ、社会問題の解決を目的とする「社会的起業」のスタートアップが主導権を握れる。チャットアプリとして高度な技術開発力をもっている訳ではないストップイットが、大手を抑えて教育現場で存在感を発揮しはじめているのは、こんな事情がある。

STOPit不要の未来を願う

ストップイットジャパンはリクルート出身の谷山大三郎代表(35)が2015年に創業した。谷山氏自身も制服を切られるなど壮絶ないじめにあった。「親を否定することになるようで親には相談できなかった」と振り返る。

それでも学校に通えたのはある教師の存在だった。「相談できる、見ていていれる人がいることの大事さを痛感した」。リクルートに入社し、働きながら教育関連のNPO法人の勉強会に参加していたが、入社7年目にNPO法人の活動に専念するため退職した。

15年に偶然、米国で前年に始まったストップイットの取り組みを知る。すでに米国では300万件以上ダウンロードされ広がっていた。「SNSを使った新しい取り組みで過去の自分のような子どもを救えるのはないか」。直感的に感じ米本社に乗り込んだ。その場で日本での販売総代理店契約を結び、創業した。

本家の米国のストップイットは、カナダの少女がいじめを苦に自殺した事件が端緒だ。心を痛めたシリアルアントレプレナー(連続起業家)のトッド・スコーベル氏が14年にシステムを開発した。取り組みに賛同した米大リーグ、マイアミ・マーリンズ最高経営責任者(CEO)のデレク・ジーター氏が広告塔となり、知名度が向上。米国では、サービス開始から約4年で導入校数は約6000校、300万人が利用している。

一方、谷山氏が16年に完成させた日本式ストップイットは、教育教材と組み合わせた点に特徴がある。谷山氏が非常勤講師を務める千葉大学教育学部などと共同でいじめ対策の教育映像を開発。アプリの導入時に学校の授業などで流し、谷山氏自身も講演し、子供たちに理解を深めてもらう。

約45分間の映像は、いじめを傍観する中学生が主人公。生徒一人ひとりにドラマの主人公の立場に立ってもらい、いじめを止めるかどうか考える内容だ。映像のおかげで子ども自身がいじめを許さないためにどうすべきか考え、いじめを止めたいという反応が増えた、という。

ストップイットは、問題を学校外に見えるようにする効果が大きい。いじめの隠蔽を防いだり、いじめそのものを抑止する可能性も期待できる。実際、米国ではストップイット導入でいじめが減ったとの報告もある。

利用のコストは生徒1人あたり年数百円。本家の米国と同じく、自治体が費用を負担し、生徒は無料で利用できる。谷山氏は「収益性を確保し事業を継続させていく」としながら、「究極的にはストップイットが必要ない未来を目指したい」と夢を語る。

(京塚環)

[日経産業新聞 2018年10月25日付]

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