企業年金、確定拠出が5割超え 個人の運用主流に
従業員の年金を確定拠出型で支払う企業が増えている。厚生労働省が23日発表した調査結果によると、企業年金制度のある企業のうち、運用手段を従業員が決める確定拠出型を活用している企業が初めて5割を超えた。東京センチュリーやソニーなど上場企業で導入が相次いでいる。運用結果次第で企業側負担が重くなる確定給付型から移行しており、企業任せから個人による年金運用が主流になりつつある。
厚労省の就労条件総合調査では、1月1日時点で3697企業から回答を得た。企業年金の調査は5年に1度実施する。年金制度の形態を聞いたところ、2013年の前回調査と比べられる条件で確定拠出が50.6%を占め、約15ポイント上昇した。企業があらかじめ約束した利回りで運用する確定給付型は45.0%と、約9ポイント上昇したが、確定拠出が大きく上回った。
確定拠出は従業員が預金や投資信託などから運用手段を選ぶ。運用が好調なら将来もらえる年金額が増える。信託協会などによると、運用残高は3月末時点で約11兆6600億円。加入者は7月末時点で686万人にのぼる。
大手企業では確定給付から確定拠出に移行する動きが相次ぐ。リース大手の東京センチュリーは10月、従業員約1500人に対する企業年金を完全移行した。運用しやすいよう、従業員向けにウェブを通じた投資教育などを充実させる。会社が拠出する掛け金に加え、個人の給与からも拠出(天引き)できる制度を併せて導入する。
ソニーも19年10月、OBを除くエレクトロニクス事業の社員約3万人を対象に、確定拠出に移行する。18年度末までに対象者の3分の2以上の同意を得て厚労省への認可申請を目指す。補填金としてこれまでの積立額に会社側が平均4割を上乗せする。JR西日本は6月、正社員を対象に確定拠出を導入した。
これまで大企業で多かった確定給付は、運用がうまくいかなかった分の補填を企業がしなければならない。財務負担が重いため、確定拠出に移行している。
負担を嫌って企業年金の制度をやめる企業も増えている。導入している企業の割合は全体の29.1%と、前回調査から約5ポイント下がった。少子高齢化に伴う財政難を踏まえ、公的年金の先細りが避けられない中、老後の生活を支える私的年金の拡充は重要な課題になっている。
厚労省は17年に個人型の確定拠出年金(イデコ)の対象を20歳以上60歳未満の全国民に広げ、加入者が100万人を超えた。60歳代で働く高齢者が増えていることから、加入の上限年齢を60歳から65歳に引き上げることを検討する。将来もらえる年金額を増やすには掛け金の上限引き上げも課題になる。