トランプ氏、サウジ説明に「うそ」 記者死亡で不満
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビア政府に批判的だったサウジ人記者ジャマル・カショギ氏の死亡を巡り、トランプ米大統領は20日、サウジ当局の説明に「ごまかしやうそがあった」と不満を示した。米紙ワシントン・ポストのインタビューで語った。サウジの説明のどの部分を「うそ」と呼んだのかは不明だが、トランプ氏はこれまでサウジの立場を一貫して擁護していた。
トランプ氏は事件への関与が疑われているムハンマド皇太子について「彼に責任があるとは誰も言っていない」と指摘。「彼に責任がないことを望む」と述べた。
ロイター通信によるとサウジの匿名当局者は21日までに、カショギ氏が拳によるけんかで死亡したという説明を修正し、死因は「大声を上げたカショギ氏を容疑者が黙らせようと首を絞めた結果」とした。サウジは当初、カショギ氏は総領事館を立ち去ったと主張。トルコ捜査当局が指摘した殺害説を「根拠がない」と強く否定していた。
国際社会でも整合性のない説明を疑問視する声が広がり、幕引きを望むサウジへの圧力が強まっている。ドイツのメルケル首相は20日「事件についての明確な説明を求める。イスタンブールの総領事館で起こった事件について得られる情報は不十分だ」と批判した。
カナダのフリーランド外相は20日「説明は一貫性がなく信頼できない」という声明を発表した。フランスのルドリアン外相も「多くの疑問に答えていない」と指摘した。
サウジ側の説明によると、カショギ氏をサウジに連れ戻す目的で、情報機関ナンバー2のアフメド・アシリ氏が15人のチームを編成し、トルコに派遣した。今月2日、書類手続きで総領事館を訪れたカショギ氏に連行する意図を告げると、同氏が声を上げ、パニックに陥ったチームが同氏を黙らせようと首を絞めたところ死亡したという。
15人は死亡を隠蔽するため、うその報告書を作成。カショギ氏が生きて建物を出たことを装うため、同氏の衣類やメガネ、アップルウオッチを身につけて総領事館を退出した。遺体はトルコの地元協力者に引き渡したという。
トルコの捜査当局は、カショギ氏が殺害された際の音声記録を入手していると報じられているが、公表はされていない。トルコ捜査当局は、イスタンブール近郊の森などに隠された可能性のある遺体を捜索している。