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迷走続いた農政 強い農業描けず

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経済のグローバル化でずっと守勢に回っていた農業を立て直そうと、農政は平成時代に大転換を目指した。将来を担う経営感覚のある農家の支援を通した競争力の向上だ。だが成果を出す環境が整う途上で、民主党政権の誕生と自民党の政権復帰という2度の政変で混乱を深め、「強い農業」を実現するための道筋は見えなくなっている。

1992年6月、農林水産省は農政の目標を大きく変える指針を発表した。タイトルは「新しい食料・農業・農村政策の方向」。今も農業関係者が「新政策」の略称で呼ぶこの指針は、平成時代の農政が向かうべき方向を力強く示していた。

背景にあったのが、大詰めを迎えていたガット・ウルグアイ・ラウンドの貿易交渉だ。翌年決着する交渉で、日本はついに「一粒たりとも入れない」としていたコメの市場開放に追い込まれる。激化する国際競争にどう立ち向かうのかを示すのが、指針の大きな目的だった。

企画室長の立場で指針を中心になってまとめた高木勇樹氏(のち農水次官)によると「本来やろうとした2つのことができなかった」。コメと農地の制度改革だ。コメは交渉中なので市場開放を織り込んだ議論ができず、戦後の農地解放の成果の農地制度は省内で擁護派が圧倒的。どちらも「聖域」だった。

2つの議論が阻まれたことで、提言はかえってその後の農政の的の中心を射抜くことになる。キーワードは「経営」だ。零細な兼業農家と経営マインドを持つ農家を区別し、後者を重点的に後押しする方針を打ち出した。目指すのは家業から企業への脱皮だ。そのために「市場原理と競争原理を一層導入する政策体系に転換する」と宣言した。

農政の節目では往々にして農協が反対に回るが、高木氏によると「経営がテーマなので、問題視されなかった」。農協の意向に左右される政治の反発を受けることなく、経営を軸にすえた施策が次々に具体化する。低利融資などで経営を後押しする農家を市町村が決める認定農業者制度がスタート。農業法人が株式会社になることも認められた。

経営の実現を追求するうねりの中で、新政策が避けた課題も俎上(そじょう)に上った。戦後農政の根幹とも言うべき、米価を政府が決める食糧管理制度が廃止され、本格的な産地間競争の時代に入った。農地解放で誕生した自作農を主役とする考えも薄れ、農地の貸し借りが活発化。企業が農地を借りて農業に自由に参入できるようになった。

だが、政治の激震がこの流れをいったん断ち切る。2009年の民主党(当時)政権の誕生だ。遠因は2年前の07年。農水省は農家の支援を規模で分ける制度を導入した。対象は原則として都府県で4ヘクタール、北海道で10ヘクタール以上の認定農業者。新政策に端を発する平成の農政は、大規模農家の優遇という形に純化していた。

自民党内にリスクを懸念する声はなかったのか。元農相で農政に影響力のあった谷津義男元衆院議員は当時、「規模で切るのは問題だ」と主張したという。対象になる農家があまりに少なかったからだ。

不安は的中した。07年の参院選で民主党が掲げたのが、コメ農家に広く補助金を出す戸別所得補償制度だった。考案した篠原孝衆院議員によると、「名前は小沢一郎代表(当時)が決めた」。念頭にあったのは、旧食管制度で米価の算出方法だった「生産費所得補償方式」だ。高米価時代への農家の郷愁にネーミングで訴えた。小沢氏はこれを武器に都市型政党だった民主党の支持を地方に広げて自民党を歴史的大敗に追い込み、政権交代の流れを引き寄せた。

この衝撃がその後の農政に影響した。12年12月には自民党が政権に復帰したが、農業票離反を恐れ、時計の針を元に戻せなかった。民主党の戸別所得補償制度は廃止したが、コメを家畜のエサに回したときに出す補助金を大幅に拡充した。認定農業者制度は残っているが、農家が作った計画を達成できなくても、計画を立て直せば更新できる緩い制度でしかない。選別政策はすっかり影を潜めた。

国際競争を覚悟して作った新政策は何を残したのか。農家が会社を立ち上げ、従業員を雇うのは当たり前になったのは大きな成果だ。だが国連食糧農業機関(FAO)によると、単位面積当たりのコメの収量は90年には米国と同水準だったが、15年は約2割少ない。中国にも追い抜かれた。生産性では海外と比べて著しく見劣りするのが現実だ。

農業は高齢農家の引退による耕作放棄の増大という危機に直面している。コメをはじめ、いま補助金を受け取っている農家の多くは早晩リタイアする。自民党農林部会長を経験した小泉進次郎衆院議員は「経営が大事だと訴え続けている」と語るが、必要なのは強い農業をどう実現するかをもう一度正面から議論することだろう。(吉田忠則)

証言 生源寺真一・福島大学教授が語る

2002年に農林水産省に設置された「生産調整に関する研究会」に座長として参加した。行政ではなく農家や農業団体が主役となってコメの需給を調整する仕組みを作ることを確認するとともに、調整に参加する人にどうメリットを与えるかを議論した。

焦点は担い手をどう支援するかだった。米価が下落した分を薄く補填する仕組みはもともとあったが、担い手への支援はもっと厚みを増すべきだという話になった。こういう議論の中で農水省が主導し、都府県では4ヘクタールなど規模で線引きする案が出てきた。

農水省とのやり取りで聞いたのは「普通の世帯所得の半分程度を農業で確保できる規模」ということで、ようは専業農家やそれに準じる農家をしっかり支えようということだった。まずコメを対象に先行実施し、07年からは麦や大豆など他の品目にも広げた。

納税者の負担で助成する以上、社会に還元される道筋が明確であることが大事だ。担い手を支えて規模拡大とコストダウンが進み、米価が下がれば消費者の利益になる。ただし、これから頑張ろうと思う人への支援を考えれば、単純に面積だけで切るのは合理的ではない。参院選で自民党が負けた後、面積要件を満たしてなくても市町村の判断で助成できるようにしたことに違和感はなかった。

当時の農政は価格を支えて消費者に負担を求める手法から財政負担型への移行と、担い手への支援の集中を進めていた。民主党の政策は財政負担型だが、バラマキの面があった。一方、いまの飼料米は米価を支える政策に逆戻りしており、かなり疑問を感じる。米価が上がれば担い手にも利点はあるが、特段支持しているわけではない。担い手重視の財政負担型にもう一度戻るべきだと思う。

キーワード

農産物貿易の自由化

日本は戦後一貫して農産物の市場を開放してきた。その流れは平成に入っても変わらず、1991年に牛肉とオレンジの輸入枠を撤廃して自由化した。消費者は多様で安い食材を享受できるようになる一方、農政が振興してきた畜産と果樹が本格的な国際競争に突入。93年にはガット・ウルグアイ・ラウンドでコメの輸入枠を設定することで合意し、順次枠を拡大した。輸入米のうち年間10万トンを主食用に回すことができる。

直近で最大の交渉となったのが、2015年10月に大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)だ。日本は農林水産品で関税をかけている834品目のうち、約半数で関税を撤廃することを認めた。TPPはその後、米国が離脱して漂流しかけたが、17年11月には残る11カ国で締結することを確認。一方、米国との間では新たな通商協議に入る方向で、農産品では牛肉などの関税引き下げが焦点になる。

企業の農業参入

一般企業の農業参入は2009年の農地法改正で農地を借りる形でなら完全に自由になり、その後、株式会社などによる参入が急増している。ただ経営面積は平均で3ヘクタール弱と普通の農家と変わらず、栽培品目の中心は野菜。これは企業がやっても既存の農業の構造を簡単には変えられないことを示す。企業が農産物の生産を始め、うまくいかずに撤退する例も少なくない。一方、農家などが中心になり作った農業法人は農地を保有できるが、一般企業の出資比率は議決権ベースで2分の1未満に制限されている。出資上限は段階的に引き上げられてきている。

食料自給率と自給力

自給率は国民が実際に食べている食料のうちどれだけを国産でまかなっているのかを示す。自給力は国内の農地をフル活用し、国民が必要とする食料をどれだけ供給できるかを試算した指標で、2015年から過去にさかのぼって公表し始めた。自給率は4割前後で下げ止まっているが、耕作放棄の増大に伴い自給力は下がり続けている。農林水産省の発表によると、コメなどを中心に栄養バランスを考慮して生産した場合、再生可能な荒れ地を活用しても必要量より3割強少ない。

スマート農業

人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、センシングなど他産業で急速に革新が進む技術を応用し、これまでの栽培技術では難しかった品質の向上や効率化を農業分野で達成することを目指す。高齢農家の大量引退で人手不足が深刻になっており、熟練を要しない作業の確立や省力化が求められていることが背景にある。農林水産省が2013年に「スマート農業の実現に向けた研究会」を立ち上げ、注目を集めた。

自動走行のコンバインや収穫機などのロボット農機、栽培環境をAIで制御する機器、農場観察用のドローン、人の作業を機械を使って補助するアシストスーツなどの実用化や低廉化が期待されている。矢野経済研究所は17年10月、作物の栽培や販売をクラウドでデータ管理するサービスやロボットなどの市場規模は、16年度の104億円から23年度には333億円に拡大するとの見通しを発表した。

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