米金利高、商品相場下押し ドル高で割高感
米国の金利上昇が国際商品の相場を下押ししている。米金利高はドル高を介し、米国外で割高感が強まる非鉄金属や穀物の売りを誘う。金利高で利子のつかない金が買われにくくなったほか、米国では住宅ローン金利上昇が住宅用木材の価格を押し下げる。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを継続するとの見方は強く、商品の上値を抑え続ける可能性がある。
米10年物国債の利回りは3.1%台。9日に3.2%台と7年5カ月ぶりの高水準をつけ、今も高止まりしている。「米国1強」とも言える景気の強さが背景だ。米国への資金流入はドル高を呼ぶ一方、特に景気減速が懸念される新興国の通貨に下落圧力がかかる。
銅やアルミニウムなどの非鉄は最大消費国である中国の人民元安で上値が抑えられている。対ドルの元相場は1ドル=6.9元台と4月の高値から1割近く下落。非鉄などはドル建てで取引するため「人民元が下がると、中国の購買力低下で需要が弱まる」(米ゴールドマン・サックス)。銅の国際価格は1トン6200ドル前後と年初比1割安い。
通貨ルピーが最安値圏にあるインドなどでも自国通貨建ての資源輸入コストは膨らむ。「通貨安でインフレ圧力が新興国で強まる可能性がある」(みずほ総合研究所の井上淳主任エコノミスト)。新興国がけん引してきた非鉄の需要を冷やす可能性が意識されている。
ドル高は農産物の生産大国である米国の輸出にも逆風だ。「米国の生産者の売り渋りで輸入国の需要が米国以外にシフトする可能性がある」とフジトミの斎藤和彦チーフアナリストは指摘する。
特に影響が大きそうなのはトウモロコシ。アジア諸国は相対的に割安になったウクライナ産に輸入元を切り替えているとの見方がある。
米国で金利上昇による需要への影響が大きいのが木材だ。シカゴ市場の先物は5月につけた高値の半値まで下がり、1年半ぶり安値圏にある。住宅ローン金利が7年半ぶりの水準に上昇し、米国の住宅建設が鈍るとの見方が売りを誘っている。
貴金属では、米金利が上昇すると利子のない金の魅力が薄れ、ドルの需要が高まれば代替投資としての金需要が鈍りやすい。ニューヨーク先物は8月中旬以降、1トロイオンス1200ドル前後で低迷する膠着相場が続いた。
ただ「一層の金利上昇は株安要因になるため、金にとってリスクオフの買い場になる局面もありうる」(金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏)。10日の米国株急落を受け、逃避資金の受け皿となった金が急伸する場面があった。
国際商品の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数は200を割り込み、原油を除く軟調な相場を映す。国際通貨基金(IMF)は9日、世界経済の成長率予測を下方修正した。商品需要の陰りを予感させる材料は目に付きやすい。
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