台湾、米国産大豆輸入3割増へ 関係強化狙う
【台北=伊原健作】台湾が貿易を通じて対米関係を強化している。2018~19年に15億6千万ドル(約1750億円)相当の米国産大豆を購入すると決定。年間ベースでは17年に比べ3割増に急拡大する。中国の対米報復関税で苦戦する米国の農家の助けとなる。台湾の蔡英文政権は中国の圧力が強まるなか、米国の支援に期待。中間選挙を控えて農家の不満に苦慮するトランプ米政権に接近する狙いが透ける。
9月後半、台湾の農業関連企業でつくる訪問団が訪米し購入を決めた。米中西部、アイオワ州やミネソタ州などから最大390万トン、15億6千万ドル相当の大豆を輸入する。台湾の対米窓口機関の高碩泰代表(駐米大使に相当)は声明で「政府と民間がともに力を尽くし(米台の)互恵関係を発展させる」と述べた。
両州は「ファームベルト」と呼ばれる穀倉地帯にあり、中国の報復関税で大豆農家が打撃を受けている。貿易摩擦を仕掛けたトランプ政権への不満につながり、11月の米中間選挙では激戦が予想されている。
9月には中国国営メディアがアイオワ州の地方紙に、米保護主義を批判する趣旨の広告を掲載。米国産大豆の最大の輸入元である「中国は失うことができない強固な市場だ」と主張していた。
台湾の外交筋は、今回の大豆購入は「米との関係強化を目指す蔡政権の意向を映す」と話す。蔡総統は10月2日に訪台した米西部ワイオミング州のマット・ミード知事と面会し、経済や貿易連携について意見を交換。州レベルでも米との関係強化を進める。
台湾は大豆の購入に向け2年に1度の頻度で訪問団を米に送ってきた。昨年訪問した際に18~19年分の購入量は決めていたが、今回の訪問で従来計画を3割上方修正した。行政院(内閣)農業委員会によると、年平均でも17年実績に比べ3割増となる。
中国は米国にとり最大の大豆輸出先であり、17年には約3285万トンを輸入。台湾の輸入は約140万トンと量では見劣りするが、少しでも関係強化につなげたい意向がにじむ。米国産大豆の輸入増で対米貿易収支の黒字を抑制し、米側と関係を良好に保つ意図もある。
経済部(経済省)によると、18年1~8月の台湾の対米輸出は前年同期比6.6%増の254億ドルと過去最高だった。米中貿易戦争を受け、米企業が部品などの調達先を中国から台湾に切り替える動きが出たという。
台湾は日本と同様に輸出が主力だが、対米貿易黒字は17年実績で67億ドルと、米の貿易赤字全体の1%未満にとどまる。台湾は同年に農産品輸入全体の4分の1に当たる37億ドル相当を米から購入するなど貿易収支のバランスに留意してきた。米への輸出が拡大するなか、輸入も増やして均衡を保つ狙いがうかがえる。
米政府は9月24日、台湾にF16戦闘機の交換部品など計3億3千万ドルの武器を売却する方針を明らかにした。蔡政権は、安全保障分野の貿易も拡大し対米関係強化につなげたい意向とみられる。