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松葉づえ安全に、高専生が手作りロボで見守り

高専に任せろ!2018

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

和歌山県御坊市にある和歌山工業高等専門学校(和歌山高専)。校舎や学生寮からは紺碧(ぺき)の太平洋に沈む美しい夕日が眺められる。この景色を学生時代の一番の思い出として巣立っていくエンジニアも多い。エンジニアの卵たちが繰り広げる「ものづくり教育」の現場は、低予算でユニーク。まさに高専らしい学舎だ。

ルンバやキネクト活用

スチールの学習机をひっくり返したような3段の棚が、家庭用掃除ロボット「ルンバ」の上に乗っかっている。2段目にはマイクロソフトのゲーム機Xboxの周辺機器「キネクト」が置かれ、さらに最上段のノートパソコンにつながる。

高専生が「ソーシャルドクター」となって社会課題を解決するケースが増えているが、この手作り感満載の物体が活躍するのは医療・福祉分野。松葉づえで歩行する人のための「見守り・付き添いロボット」だ。ルンバの動力により、松葉づえの歩行者の少し前を先導して進む。歩行者の動作はキネクトのカメラとモーションキャプチャーセンサーが計測。パソコンで身体加速度を解析し、歩行者の状況を把握する仕組みだ。パソコンの画面には「歩幅が小さいです」「足をしっかり上げましょう」などと歩行者をサポートする文章が現れる。

技術的な基盤は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」と動作解析技術の組み合わせだ。ただしルンバとキネクトを合算しても総額10万円にはならない。研究メンバーの一人、専攻科2年の杉山僚彦さん(22)は「身近なものを組み合わせることにこだわりました」と胸を張る。従来の歩行動作解析は、松葉づえ歩行者の身体にセンサーを取り付けたり、複数のカメラを駆使したモーションキャプチャーを使ったりするなど大がかりで、歩行者にも負担が重かった。

試行錯誤を繰り返すうちに、大腿部の動作から身体加速度を推定できることが判明。そこから軽量で扱いやすいXboxのキネクトで計測するアイデアに行き着いた。

実はキネクトは高専ではよく知られた頼もしい相棒だ。これまでも「上肢リハビリ支援装置の開発」(秋田工業高等専門学校)や「ジェスチャー動作支援ツールの開発」(舞鶴工業高等専門学校)などで使われている。

ただし課題はまだあった。キネクトは計測領域が狭く、据え置きの状態では歩行者の正確な動作解析ができなかったのだ。そこで一般家庭にも浸透しているルンバを移動ロボットに見立て、キネクトを搭載して歩行者を先導する方法を編み出した。ルンバも高専生の間では「掃除をさせるだけではもったいない」と、その攻略法や活用術などがよく話題となる。開発メンバーを指導したのは知能機械工学科の津田尚明准教授。ロボット技術で生活を便利にする研究に取り組んでいる。きっかけは、足を負傷した同僚が漏らした言葉だった。「松葉づえの使い方が分からない」

2009年のことだ。確かに病院で松葉づえの使い方を丁寧にレクチャーすることは少ない。慣れない使用者が転倒し、さらに負傷することもある。「ならば松葉づえの歩行を解析しよう」と思い至った。開発後は、和歌山県立医科大学(和歌山市)と協力して実証実験にも取り組んだ。

 和歌山高専のホームぺージにある津田准教授の研究室紹介にはこんな言葉が並ぶ。研究活動を「経験する」機会を提供します。座学で学んだことを「試す」機会を提供します。実社会で評価を受ける「社会実装」をめざします――。

転ぶ感覚、装置で再現

津田准教授の門をたたいたのが、専攻科で電気工学と機械工学、電子工学、情報工学を組み合わせた「メカトロニクス工学」を専攻する杉山さん。「人の役に立つ研究がしたかった」からだ。技術を社会に還元し、医療や福祉の向上に結びつける。一連の研究活動はそんな希望に合致した。

杉山さんはさらに踏み込んだ。松葉づえの初心者を対象に「転倒しそうな感覚」を体験してもらうことで、事故を未然に防ぐための装置を開発した。その名も「転倒感覚提示装置」という。装置はモーターとタイヤで構成されており、松葉づえの接地面に搭載する。松葉づえを使って前に進もうとすると、モーターが駆動して逆方向の力がかかるため「転倒することなく転倒しそうな感覚が体験できる」。

成果を論文にまとめ、電気・電子技術に関する学会(IEEE)に投稿したところ独創性が評価された。8月15~17日にマレーシアで開催された国際会議で採択され、「ベスト・ペーパー・アワード(最優秀論文賞)」を受賞したのだ。

津田准教授の研究室では、他にも動作解析を生かした様々な機器の研究が進む。代表的なものが高齢者や視覚障害者の使用を想定した誘導ロボットだ。手押し車のような外観で、赤外線センサーで障害物を避けながら、自動で移動できる。パソコンが直径50センチメートルほどのタイヤに組み込まれたモーターの動きを調整し、行き先をコントロールする。利用者は後ろに立って取っ手をつかみ、ロボットについていけばいい。

もし利用者が自分で動く方向を決めたい場合は、手元のハンドルを操作する。ここには運転シミュレーションゲームのハンドルを転用した。津田准教授は「これも学生が提案したアイデアです」。素晴らしい師弟関係が生み出したアイデアの数々。津田准教授は次なるステップとして、開発したこれらの機器を地元機械メーカーに売り込むことも検討している。

杉山さんは卒業後に、医療機器を扱う電機メーカーへの就職が決まった。「和歌山高専での学びを生かし、社会に役立ちたい」と意気込む。高専で課題解決と向き合った経験を糧に、新たな活躍のステージに挑む。

(企業報道部 鈴木泰介)

[日経産業新聞 2018年8月31日付]

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