豊洲市場開場 仲買人ら「やるしかない」「使いやすくしていく」
マグロの初セリを告げる鐘の音が鳴り響く――。83年の歴史を紡いだ築地市場(東京・中央)の閉場から5日間の引っ越し期間を経て、「首都圏の台所」として豊洲市場(同・江東)が11日、開場した。地下の汚染問題などで開場が約2年遅れ、水産物で世界最大規模の新卸売市場がようやく始動したが、初日から周辺の交通渋滞が課題として浮かび上がった。
11日午前5時半、水産卸売場棟(5階建て)の1階。全国各地から届けられた巨大マグロがずらりと横たわる「マグロ卸売場」は緊張感に満ちている。初セリを知らせる鐘の音を合図にマグロのセリが始まり、セリ人と仲買人のやり取りでにぎやかになった。
「サンマとキンメダイ、2箱ずつ」。仲買人が客から入った注文を大声で叫ぶと、胸元のポケットからペンを取り出し伝票を作った。豊洲市場で最も活気があふれる「水産仲卸売場」。溶けた氷で足元はぬれ、すでに魚特有のにおいも広がる。施設は真新しいが、取引が盛んな早朝の雰囲気は築地と差がない。
マグロ仲卸「鈴与」店主、生田与克さんは「設備は新しいし、無事に移転できてうれしい」。次々と入る注文を忙しそうにさばき「お客さんの期待に応えられる仕事をしていくだけ」。水産仲卸「山治」社長の山崎康弘さんは「始まっちゃったんだから、やるしかない」。かつて移転に難色を示したこともあったが「不安を言っても商売にならない。ここを使いやすくしていくことが僕らの役目だ」と前を向く。
青果卸売場も買い出し業者らで混雑した。「築地定松」社長の牧泰利さんは「ドタバタがあったけど、覚悟をもって移転してきたわけだから、食を支えるという役割をしっかりと果たしたい」。20年にわたり築地を撮ってきたという写真家、照井四郎さんは豊洲周辺を歩き回り「近代的な建物で時代の移ろいを感じる。時間をかけて人の情があふれる市場になってほしい」と話した。
一方、築地市場には11日、移転に反対する業者や市民ら数十人が正門前に押し掛け、「営業はできません」と呼び掛ける職員の制止を振り切り場内に入った。築地での営業を続けたいという水産仲卸業者の女性は「豊洲への引っ越し自体がおかしい」と憤った。