大阪ガス野球部、機動力生かし2冠に挑む
11月、地元開催の日本選手権に照準
7月に行われた社会人野球の都市対抗大会で初優勝を遂げた大阪ガスが、地元開催の日本選手権(11月1~13日、京セラドーム大阪)で2冠に挑む。就任1年目の橋口博一監督がチームに注入したのは、機動力を絡めて得点を重ねる攻撃的な野球。地元ならではの熱い応援を背に、2つ目の頂点を狙う。
過去に都市対抗で2度、日本選手権で3度も準優勝で涙をのんだ「シルバーコレクター」。ようやく壁を破った大会の直後、橋口監督は新たなスローガンとして「連覇」を掲げた。「たまたま勝つのではなく、常勝を目指す決意を込めた。来夏の都市対抗の前に、まず日本選手権で夏・秋の連覇を狙う」
今年のチームは戦力的には昨年とほぼ同等ながら、選手の考える力、積極性のレベルが上がった。さらに主将の青柳匠ら3年前の都市対抗準優勝の悔しさを知る選手がチームをまとめ、「その気になった」(橋口監督)ことが初制覇につながった。
橋口監督は慶大で主将を務めた1990年春、東京六大学優勝を僅差で逃し、大阪ガスに入社した91年の日本選手権は準優勝。引退後のマネジャー、副部長時代にも「2位の悔しさ」をかみしめた。監督就任後、春先の練習試合からどんどん盗塁させたのは「前向きな失敗は経験として残る」という信念から。壁を破るため、選手に自分で考え、トライする姿勢を説いた。
捕手の肩や投手のけん制の癖、それらの情報と自分の脚力をはかりにかけ、行けると判断すれば迷わず走る。「行けるのに走らない方が罪。いかに勇気を出せるか」。犠打でアウトを増やさず走者を得点圏に進められれば「大量点にもつながる」。
都市対抗では、足を絡めた攻撃が随所で光った。2回戦から3戦続けて1点差の逆転勝ちで、優勝経験のある強豪も連破。近畿勢対決となった三菱重工神戸・高砂との決勝では終盤に均衡を破り、押し切った。
チームは5試合で計13盗塁。象徴的な働きをしたのが橋戸賞(最優秀選手)を獲得した近本光司だ。5番を打ち打率5割2分4厘で首位打者、4盗塁。昨夏覇者のNTT東日本との準々決勝ではこの関学大出身の2年目の俊足外野手が足でかき回し、逆転の足がかりをつかんだ。
実は橋口監督にはシルバーコレクターの原点がある。大阪府立三国丘高1年だった83年秋の近畿大会大阪府予選決勝で、同学年の桑田真澄、清原和博を擁するPL学園と対戦。0-1で敗れたが、翌春の甲子園出場につながった。「その気になる」意味を知った青春の一コマだ。
(影井幹夫)