米中摩擦、配合飼料価格に波及 全農が1年ぶり値下げ
全国農業協同組合連合会(JA全農)は21日、鶏や牛、豚のエサとなる配合飼料を4四半期ぶりに値下げすると発表した。10~12月期の出荷価格を7~9月期より1%下げる。大豆など米国産穀物が中国の輸入減で余るとの見方が広がり、国際相場が下がったのを反映する。米中貿易摩擦を起点とする穀物安が畜産農家にとって一定のコスト低下要因となる形だ。
JA全農は配合飼料で国内最大手。畜産の種類ごとに卸値は異なるが、全種平均で1トンあたり約800円の値下げとなる。新価格は平均で6万4050円程度とみられる。主に鶏向けの価格が安くなる見通しだ。
中国は7月、米国産の大豆やトウモロコシに対して25%の報復関税を発動した。穀物市場では米国産大豆の主要輸入国の中国が南米産にシフトし、米国産がだぶつくとの観測が広がった。
大豆の米シカゴ先物相場の急落を受け、6月に1トン380ドル前後だった飼料原料の大豆ミール(かす)の相場も1割ほど下げた。
世界的な生産増観測も相場下落につながった。米農務省の9月時点の予測によると、2018~19年度(18年9月~19年8月)の世界の大豆生産量は前年度比で約1割増の3億6932万トンになる見通しだ。
トウモロコシも米国の豊作が確実となったほか、大豆につられる格好で相場が軟調に推移した。6月に1ブッシェル3.9ドル前後だったシカゴ先物相場は3.5ドル程度と1割ほど下がった。
JA全農によると、円安・ドル高は輸入コストの上昇要因となったものの、穀物相場の下落が大きかった。このため、配合飼料価格の引き下げを決めた。
国内の畜産農家は1年ぶりの値下がりに胸をなで下ろす。養鶏業を営むあすなろファーム(青森県八戸市)の佐々木健代表は「春先から飼料メーカーに値下げをお願いしていた。ようやく上げ止まり安心した」と話す。
養鶏農家では生産コストに占める飼料コストの比率が高い。鶏卵価格は現時点で上昇基調だが、これまで供給過剰による下落が長く続いた。北海道地震で養鶏場の生産や物流が混乱するケースもあっただけに、飼料コストの低下を歓迎する声は多い。
もっとも、穀物相場の先行きには不透明感も漂う。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は「米国産大豆の価格が大幅に下がれば、中国の実需家は再び輸入する可能性がある。トウモロコシを含め、さらなる値下がりは期待しづらい水準だ」と語る。