オリガミ、スマホ決済の黒子に 機能開放で連携の輪
スマートフォン(スマホ)決済をめぐる競争が新たなステージを迎えている。スタートアップ企業のOrigami(オリガミ、東京・港)は20日、企業向けに決済機能を無償開放すると発表した。あえて黒子に徹し、企業が独自ブランドで決済サービスを立ち上げられるようにする。LINEなど大手IT(情報技術)企業がポイントを使った経済圏を武器に相次ぎスマホ決済に参入する中、連携の輪を広げて成長を目指す。
既存の加盟店も開放
「経済圏を築いて顧客を囲い込む戦略は取らない」。20日夜、オリガミの康井義貴社長は都内で開いた自社イベントでこう宣言した。同社が今秋にも提供する決済機能「提携ペイ」はトヨタファイナンスやRIZAPグループなどが連携を検討しており、オリガミはこのほか数十社と協議を進めているという。
導入した企業はオリガミの既存の加盟店とも連携し、業種を超えた多様なサービスが展開できる。たとえば、フィットネスクラブが自社のアプリに決済機能を搭載した場合、一定量の運動をした利用者はオリガミの加盟店で使えるクーポンをもらえたり、商品を買ったりできるようになる。
オリガミは2012年創業のスタートアップで、16年にQRコード決済を始めた国内における草分け的な存在だ。利用者はアプリにクレジットカードや銀行口座を登録し、店頭のQRコードを読み取って決済する。ローソンなど約2万店舗に達する加盟店は、今年度中に5倍の約10万店舗に拡大する見通しだ。
スマホ決済をめぐっては、ポイント経済圏の拡大を図る楽天やNTTドコモなど参入企業が相次いでいる。ヤフーとソフトバンクが出資する「ペイペイ」やLINEは、小規模店舗などの決済手数料を期間限定でゼロにするなど加盟店の獲得競争が激化している。
顧客基盤が小さいスタートアップ企業にとっては脅威となりそうだが、康井氏は「スタートアップだからこそ中立的な立場で、しがらみなく展開できる」と強気の姿勢だ。さまざまな大企業を通じて利用が拡大すれば、決済を入り口とした金融プラットフォームづくりにつなげられるとみる。
海外と地方の両輪で拡大
オリガミは併せて66億6000万円の大型調達を発表した。資本業務提携した中国銀聯子会社の銀聯国際と19年3月までに中国や東南アジアなど約750万店舗で利用できるようにする。中国アリババ集団の「支付宝(アリペイ)」との提携ですでにインバウンド(訪日客)対応を進めてきたが、国外に渡航する日本の利用者もオリガミのスマホ決済が使えるようになる。
もっとも、オリガミにとって「スマホ決済はあくまで入り口。もはや決済手数料で競うフェーズは終わった」(康井氏)。企業アプリを通じて顧客の購買データを活用し、主力の決済だけでなく資産運用や信用スコアを使った少額融資など金融サービスにも参入する構想を描く。
金融サービスを広げるにも前提となるのは、スマホ決済の普及だ。日本のキャッシュレス決済の比率はクレジットカード決済を含めても2割程度と、先進国の中でも現金信仰が根強い。オリガミは資本業務提携した信金中央金庫のネットワークを活用し、地方の開拓も急ぐ。利用者の生活圏でサービスを広げられるかがカギとなりそうだ。
(駿河翼)