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FIFAコンサルタント、データを武器に利害調整

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2020年東京五輪を2年後に控え、日本社会の中でスポーツの存在感は急速に増しているように思う。これから先、スポーツは予想もしないものと結びつき、まったく新しい価値を創り出す気がしている。その手掛かりとなるようなもの、地図代わりになるものを示せれば……。そんな願いをタイトルに込めて、この連載を始めようと思っている。

20世紀の終わりごろから急速に進んだスポーツのビジネス化は多種多様な職業を生み出した。国際サッカー連盟(FIFA)と契約を交わした私がいま、就いている「FIFAコンサルタント」という仕事もそんな一つかもしれない。これまでのキャリアの中で自分が見聞きし、感じたことを紹介しながら、おいおいスポーツの豊かな可能性について語っていきたい。

日本での在宅勤務という形をとりながら、FIFAの仕事に携わって5年目になる。スイス・チューリヒのFIFA事務局とのやり取りは、メールや電話、メッセージアプリケーションなどを使ってすますことがほとんど。国際的なテレワークという感じだ。

それでも1年の3分の1は海外に出かける。チューリヒの事務局でミーティングに参加したり、現地の協会とミーティングするために中米に出かけたり。今年も南アフリカで、アフリカ各国のサッカー関係者と選手の給与未払いなどの問題を解決するための仲裁機関について協議を重ねたところだ。

国際的な施策をより広く、深く

FIFAで私がいま、籍を置くのは16年1月にできた「プロフェッショナル・フットボール・デパートメント」(PFD)という部門だ。

FIFAには主催する大会の組織運営、財務、医事、審判などを専門に扱う9つの常設委員会があるが、そのうちの1つに「フットボール・ステークホルダーズ委員会」がある。この委員会の目的はクラブ、選手、リーグ、協会、大陸連盟それぞれの利害関係を調整し、サッカー界全体の発展につなげること。メンバーにはJリーグの村井満チェアマンや元ブラジル代表主将のカフー氏もいる。

PFDはこの委員会の仕事を補完する役割を担うため事務局内に設置された。サッカーに関わる利害関係者のコミュニケーションを円滑にし、また、最新のデータや知見に基づいてクラブライセンス制度などのクラブサッカーに関する国際的な施策をより広く、深く、根づかせることを主眼にしている。

こういうチームで私が働けるようになったのは、FIFAという組織の構造改革と関係があると思っている。

ご存じのとおり、FIFAは各国・地域に1つずつある211のサッカー協会の集合体である。この組織が激震に見舞われたのが3年前の大スキャンダルだった。ワールドカップ(W杯)開催の招致活動に絡んだ汚職が発覚、幹部は摘発され、組織統治の在り方が徹底的に指弾された。

その反省から理事会に権限が集中する運営方法は見直され、総会と評議会と事務局がバランスよく組織運営にあたることになった。

こうした組織改革に伴い、常設の委員会も再編。新しくできたのが先述したフットボール・ステークホルダーズ委員会だった。FIFAはそのルーツがサッカー協会の集まりであるがために、何事も協会主導の発想でやってきたところがある。そのせいか、FIFA内にクラブフットボールと連携する部門がずっとないままにやってきた。ある意味、クラブに対してずっとトップダウンでやってきても大きな問題に発展することはなかったのだろうと個人的には思う。

ところが、20世紀の終わりごろから、欧州チャンピオンズリーグ(CL)を先頭にクラブフットボールがどんどん隆盛になってきた。競技レベルではW杯をCLが超えたといわれるようにもなった。そうやってクラブ側が力を持つにつれ、彼らの意向を無視して、FIFAが何でもかんでも決めることも難しくなったのだろう。

無理あったトップダウン方式

移籍のルール、W杯の開催時期や国際マッチデーの設定というカレンダーの問題。こういう関係者の間で利害が対立することを、FIFAとそれぞれの国・地域の協会が一方的に決め、クラブ側は黙ってそれに従えばいいというトップダウン方式ではさすがに無理がある。

これからはクラブやリーグとコンセンサスを図りながら、落としどころを見つけていく。そういう変化がフットボール・ステークホルダーズ委員会やPFDの設置につながったのだと思う。

この変化は大いに歓迎すべきことだと個人的には思っている。アジア・サッカー連盟(AFC)で8年間働いた経験から、決して豊かではない立場の感覚がわかるからだ。旧来のFIFAのトップダウン方式はスピード感があったけれど、現場とギャップがあることも多かった。「こういうふうに決めたらから君たちもやりなさい」とFIFAが指導しても、受け手は「そんなこと無理だよ」と諦めるケースもあった。

それに比べると、今の「ステークホルダー・エンゲージメント」とFIFAが呼ぶやり方は意思決定に時間はかかる。だが選手とクラブ、リーグと協会といった利害が対立しがちな関係者が全員で話し合いながら納得できる全体最適をひねり出すので、答えを現場に持ち込んでも混乱は小さくすむ。

その典型的な例としてクラブライセンスの問題がある。この制度は、使用するスタジアムや財政面などにクリアすべき条件を定め、それを満たせないクラブは成績に関係なく、当該リーグで戦う資格を与えないというもの。

FIFAは07年にクラブライセンスのレギュレーションを承認し、08年から施行したが、内容は欧州サッカー連盟(UEFA)がつくったものに近く、高い要件だった。

アジアでいえば、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に参加するようなクラブはFIFAが求めるライセンスの条件を満たしていないと困るかもしれないけれど、ACLに出るレベルにはない国やクラブにとっては、高すぎる要件だったと思う。西欧を除けば、どこの大陸にも貧富の差はあり、立派なライセンス要件を突きつけられてもクリアできない国やクラブは多い。そういうところは最初から何もやる気にならず、結果的に何も起こらないし何も変わらないという悪循環を招くことになった。

現在のFIFAは、それに比べれば随分、親身になったように感じる。

「アフリカ、オセアニア、北中米、南米、それぞれの実情にあったライセンス制度を提案します。そのためのサポートも惜しみません」

こういうフレキシブルなやり方で現場の都合に合わせながら、国レベルまでライセンス制度を着実に落とし込もうとしている。

内部の意識や取り組みに変化

ライセンスとはあくまでもクラブを繁栄させるためのツールであり、クラブを助けるためのもの、クラブの力を引き出すもの。要件を盾に上からクラブの頭をゴンとたたくものではない。そういう意識や取り組みの変化があるがゆえに、アジアで8年間働いた私の経験がFIFAで生きているのかもしれない。

外国人を相手に仕事をしていると話すと「机をがんがんたたきながら自説を主張して一歩も引かない感じですよね。大変ですよね、外国人との交渉は」と同情するような視線で見られることがある。私にいわせれば、そんな場面はほとんどない。むしろ、大切にしているのはデータやエビデンスを基に議論すること。主観と主観をぶつけると感情的になって落としどころがなくなってしまいがち。そこにデータという客観的なものがあれば、主張の正当性は格段に認められやすくなる。

エゴの強い外国人は得をし、おとなしい日本人は損をする、というような紋切り型の発想にあまりとらわれない方がいいようにも思う。いろいろな利害の調整を最優先に図る今の仕事だと、ボランチのようなバランス感覚が必要になる。むしろ、日本人の気質に合っているような気もする。少なくとも私は自分を妙に飾らずに仕事ができている。

代表チームの成長とJリーグの成功により、どこに行ってもそれなりに遇されることが多い。アジアで素晴らしい成功を収めたサッカーの国の恩恵を、私も有形無形の形で受けているのだろう。Jリーグをつくる前の1980年代なら決してこうはならなかったはず。先人の偉大な業績のおかげで、こうした仕事に就けている。そんなこともしみじみと思うのである。

(FIFAコンサルタント 杉原海太)

 すぎはら・かいた 1996年東大院修了。コンサルティング会社を経て国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院を2005年に修了。06年からアジア・サッカー連盟(AFC)に勤めた後、14年から現職。FIFAの戦略立案に携わる。47歳。

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