北朝鮮、南北融和を演出 主要行事を生中継
【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は18日、訪朝した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を厚遇で迎えた。平壌の順安空港まで出向いたほか、韓国側が求めた主要行事の生中継も一部認めるなど、融和ムードの演出に腐心した。
午前10時9分、文氏が金正淑(キム・ジョンスク)夫人を連れだって政府専用機から降り立つと、金正恩氏は李雪主(リ・ソルジュ)夫人とともに文氏夫妻を迎えた。
両首脳は4月、5月に続く3回目の対面ということもあってか、打ち解けた雰囲気。金正恩氏は破顔の表情で文氏を抱擁し、親密さを強調した。空港には金正恩氏の妹、与正(ヨジョン)氏も姿を見せ、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長、崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党副委員長ら幹部も出迎えた。
順安空港にはスーツ姿の男性や、色とりどりの民俗衣装をまとった女性が朝鮮半島を描いた「統一旗」や北朝鮮の旗、花飾りを振りながら「マンセー」(万歳)を連呼。韓国からの訪朝団を出迎えた。
北朝鮮メディアによれば、8日に中国共産党序列3位の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会(全人代)委員長が訪朝した際は、金正恩氏の出迎えは確認されなかった。同氏は文氏を出迎えることで、文政権に対する北朝鮮の厚遇をアピールする狙いとみられる。
文氏の訪朝は軍事境界線がある板門店で4月に開いた南北首脳会談で合意していた。文氏が空路を選択したのは、金正恩氏が文氏に「我々の道路は整っていない。飛行機がいちばん楽だ」と語ったことがあるようだ。
韓国メディアは文氏の訪朝を連日大きく報じているが、市民の反応は4月の首脳会談と比べると冷静だ。ソウル在住の20代の男性は「友人とも南北問題について話す」と語る一方、30代の女性は「日々の暮らしが大事で、大きな関心はない」と打ち明ける。
韓国大統領の訪朝は2007年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領以来、11年ぶり。盧氏は南北の軍事境界線を徒歩で越え、陸路で平壌に向かった。初の南北首脳会談となった00年は金大中(キム・デジュン)大統領が空路で訪朝。金正日(キム・ジョンイル)総書記が順安空港で出迎えた。