韓国大統領が訪朝、金正恩氏が出迎え 首脳会談へ
【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は18日午前、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と今年3回目の南北首脳会談に臨むため、専用機で平壌入りした。18、19の両日に首脳会談を開く。北朝鮮の非核化に向けた具体策を協議するほか、軍事境界線近くの緊張緩和策で合意を目指す。
文大統領は午前10時前に平壌の順安空港に到着した。空港での歓迎式典では金正恩氏が出迎え、文氏を抱擁して言葉を交わした。南北両首脳の姿は平壌入りした韓国メディアが生中継した。両首脳は昼食会をはさみ、午後3時半から初日の会談に臨む。文氏は20日まで滞在する予定だ。
文氏と金正恩氏の会談は軍事境界線にある板門店で開催した4月27日、5月26日に続き3回目。韓国大統領の訪朝は2007年の盧武鉉大統領以来、11年ぶりとなる。4月の板門店宣言に文氏の訪朝が盛り込まれていた。
南北首脳会談の焦点は非核化の実行に向けた具体策だ。6月12日の米朝首脳会談後、米朝の高官協議は膠着している。米国が北朝鮮に核施設の申告や査察受け入れを求める一方、北朝鮮は先に朝鮮戦争の終戦宣言に踏み切るべきだと要求するなど、双方の主張は平行線をたどっている。
文氏は金正恩氏に核の申告や核弾頭の廃棄といった具体的な行動を促す方針だ。来週にはニューヨークでトランプ米大統領との会談を予定しており、非核化の進展と終戦宣言への道筋を描きたい考え。文氏は17日の会議で「金正恩氏と虚心坦懐(たんかい)に話し合う」と語った。
文氏の訪朝にはサムスングループを事実上率いる李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長ら韓国四大財閥のトップ級を含む約200人が同行した。インフラ整備など経済協力への北朝鮮側の期待は大きいが、非核化交渉が停滞し経済制裁が続くなか、韓国側は実質的な協力には踏み切れない状態が続いている。
北朝鮮の朝鮮中央通信は18日午前、文大統領の訪朝を初めて報じた。「今回の平壌首脳会談は北南関係の発展をさらに加速化させる重大な契機になる」と伝えた。
菅義偉官房長官は18日の閣議後の記者会見で、今年3回目の南北首脳会談に関し「重要なことは米朝首脳会談の合意が完全に迅速に履行されることだ」と述べ、6月の米朝合意の具体化に期待を示した。
日朝首脳会談については「現時点で決まっていることは何もないが、行う以上は拉致問題の解決に資する会談にしなければならない」と語った。