「緩やかに拡大」も貿易摩擦に懸念 米地区連銀報告
【ワシントン=長沼亜紀】米連邦準備理事会(FRB)が12日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、7月中旬から8月末にかけて米経済は「緩やかに拡大した」と総括判断した。企業全体の短期の景気見通しは依然楽観的だが、貿易摩擦への懸念は強まり、設備投資の先送りなどの事例も報告された。
同報告によると、大半の地区で貿易摩擦がもたらす悪影響や不透明さへの懸念が聞かれ、そうした声は製造業以外にも広がった。中部シカゴ地区の複数の企業は「交渉の行方が見通せないので投資判断を先延ばしした」と報告した。
東部リッチモンド地区では、好況にもかかわらず新たな制裁関税による景気後退を心配して「投資に慎重になっている」との声が聞かれた。中国などの制裁対象となっている農業関係者の間でも懸念は強く、中部ミネアポリス地区では「商品価格の下落が経営を圧迫している」との報告があった。
雇用はほぼ全米で緩やかに拡大した。労働市場の逼迫が続き、広範囲で人手不足がみられた。12地区中6地区が、人手不足が売り上げの制約や事業実施の遅れにつながっていると指摘した。賃金上昇はおおむね緩やかだったが、建設業では急上昇した。
物価は、緩やかに上昇を続けた。全地区で建築資材や輸送を中心に価格上昇圧力の高まりがみられ、主に製造業で関税の影響による仕入れコストの上昇が報告された。現段階では仕入れコストの上昇が販売価格の上昇を上回っており、コストを顧客に転嫁しようとする動きが増えてきた。
同報告書は8月31日までの情報に基づき、全米の12地区連銀が最新の経済動向をまとめた。9月25~26日に開く次回米連邦公開市場委員会(FOMC)の討論資料になる。FRBは年末までに2回の追加利上げを見込んでおり、次回会合で利上げに踏み切るとの見方が市場では大勢だ。