自動運行列車、仏で2023年から 仏国鉄が発表
【パリ=白石透冴】フランス国鉄(SNCF)や日立製作所の鉄道子会社アンサルドSTSなどは12日、2023年以降、運転士の関与がほとんど必要ない自動運行列車を仏国内で稼働させると発表した。効率的な運行や事故回避に役立つとみている。日本や中国が関心を持つ分野で、フランスも開発競争に加わる。
開発に加わるのはほかに鉄道車両メーカーの仏アルストム、自動車部品の独ボッシュ、防衛・電子機器の仏タレスなど。事業費5700万ユーロ(約74億円)はSNCFと仏政府が3割ずつ、残る企業が4割を負担する。
運行が始まれば国外への輸出を検討する。世界の自動運行列車の安全基準作りでフランスがリードする狙いもある。
計画によると、パリ近郊の路線で23年、運転士は乗るが自動で加速減速する運行(レベル2)を始める。25年には高速鉄道「TGV」でもレベル2を始めるほか、地方路線で運転士の要らない完全自動運行(レベル4)を目指す。実際に運転士を乗せないようにするかは、利用者の声を聞きながら進める。
列車に取り付けるカメラやレーダーが信号、障害物を認識する。人工知能(AI)の助けでスピードを調整する。外部からのシステム乗っ取りを防ぐセキュリティーの仕組みも開発する。
フランスの地下鉄などで既に運転士が乗らない自動運行の電車が走っている。ただ、外を走る場合は積雪などの気象条件に合わせたり、突然の障害物を回避したりする必要があり、開発の難しさが増す。
自動車の開発と比べると、列車ははるかに高速で走る場合があり、より遠くの情報を一瞬で判断する能力が必要になる。
SNCFのギヨーム・ペピ社長は12日に記者会見し、自動運行で速度管理などが効率的になるため「より多くの人員を、より少ないエネルギーで運ぶことができる」と説明した。遠くの障害物などに人間より速く対応できると期待している。