NTT、再編加速で海外攻める 米に調達新会社
NTTは12日、パソコンやサーバーなどの資材をグループ一体で調達する専門会社を米国に設立すると正式発表した。グループの調達機能をまとめてコストを削減する。これまで慎重だった組織再編に踏み込む背景には、海外の通信やIT(情報技術)企業などに後れを取りかねないという焦りがある。次世代通信方式「5G」を巡る競争が本格化するなか、コスト削減で競争力を高める。
新会社「NTTグローバルソーシング」は、秋に設立予定の中間持ち株会社「NTT」の100%子会社として11月に設立する。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)やNTTデータ、NTTドコモ、南アフリカのディメンション・データなど、国内外のグループ会社が購入する大量のパソコンやサーバー、通信機器などをとりまとめ、納入元と一元的に価格交渉する。
取扱高は年1兆円規模で、発注量を増やすことで値引き交渉力を高める。ドコモが調達する携帯基地局など、グループで共通化できない製品は新会社による調達対象に含めない。
NTTは1999年の再編時の政府方針で、持ち株会社とNTT東日本、NTT西日本が資材を共同調達することはできない。これ以外のグループ各社の調達をまとめることは可能だったが、競合他社などからの批判を恐れてコスト削減は後回しになっていた。
英ボーダフォンやドイツテレコムなど海外の通信大手は2010年前後に調達専門会社を設立し、既にコスト削減の実績をあげている。NTTの競争相手は通信大手だけではなくなっており、ITサービスでは米IBMなどとしのぎを削る。大量のデータをやり取りする5G時代には競争環境が大きく変わるため、コスト削減による体質強化が急務になっていた。
6月に就任した澤田純社長は海外事業を統括する中間持ち株会社設立を発表した8月の記者会見で「世界で戦える構造ではなかった」と語った。
現在のNTT持ち株会社は規制に縛られ、外国人の取締役は就任できない。海外グループ会社のガバナンス強化のためには外国人の幹部登用も求められる。調達会社のトップには外国人が就任するほか、中間持ち株会社の取締役にも外国人を積極的に登用する。
澤田体制となって遅れていた時間を取り戻すかのように再編を加速するNTT。米国などでは通信や放送、メディアが入り乱れた市場になっている。サービスの競争力強化は待ったなしの状況だ。