8月のビール系飲料販売、猛暑でも前年比2%減少
ビール大手4社の8月のビール系飲料の販売量が12日、まとまった。今夏は記録的な猛暑となったが、台風や3月以降の業務用商品の値上げの影響もあり、市場全体は2%減少したようだ。メーカー別では7月に続き、キリンビールだけが前年実績を上回った。消費者のビール離れが強まる状況では、猛暑がビール需要を大きく押し上げる構図は成立しなかった。
キリンのビール系の販売量は前年同月比で9%増えた。第三のビールが43%増と全体をけん引した。3月に発売した「本麒麟(きりん)」の販売が好調を維持し、イオンなど流通大手のプライベートブランド(PB)の販売も全体を押し上げた。PBを除いてもビール系全体で前年同月の実績を上回ったという。
サントリービールのビール系飲料の販売量は前年同月に比べて5%減った。ビールは3%減、第三は6%減だった。ビールの販売減は「ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)」に営業を集中する戦略の影響で「ザ・モルツ」の販売が落ちているためだ。第三のビールの販売では「頂」を昨年7月に発売したことに伴う反動減が出た。
アサヒビールのビール系は前年同月比4%減った。第三が競合の攻勢を受けて8%減った。9月に「プライムリッチ」の刷新を控え、流通側で在庫を減らす動きが出たことも響いたという。今後は7月に発売したアルコール度数が7%と高めの「クリアセブン」などで反転攻勢をかける。サッポロビールはビール系全体で1%減。主力ブランド「黒ラベル」の販売が好調なビールが8%増えたが、第三の落ち込みを補いきれなかった。
猛暑に関しては「市場全体で約2.8%の押し上げ効果があった」(キリン)、「追い風となったが、台風のマイナス影響もあった」(サントリー)との見方がある。アサヒは災害や業務用商品の値上げと同様に、猛暑をマイナス要因にあげた。サッポロも「暑すぎたマイナス影響はあったのでは」と説明している。
市場は前年同月比で2%減ったもようだが、PBも含むと全体で横ばいだったとみられる。ただし消費者が缶チューハイなどを好んで飲む傾向は続いており、ビール離れに変化はみられない。
(湯前宗太郎)