ヘッジファンド日本株買いの実態
投機筋の代表格とされるヘッジファンドだが、日本株買いの形態は多様化している。日銀の出口戦略に関する思惑で売りの波状攻勢を仕掛けるときもあれば、イベントがなく商い薄い地合いのときに、プロ同士で先物売買の空中戦を演じることもある。これらの例では商品投資顧問(CTA)のコモディティートレーディングアドバイザーが、人工知能(AI)を駆使して、超短期の売買を繰り返すことが多い。一方で、グローバルマクロ系のファンドは、中期的な政治経済の流れを読み、日本株を一定期間保有する目的で買ってくる。
筆者は今月、ニューヨークのヘッジファンド14社と「日本株ワーキングセッション」に参加してきた。5月に次ぎ、今年2回目だ。彼らが日本株に興味がない時期であれば、わざわざニューヨークまで招聘(しょうへい)されることもない。前回5月も彼らの日本株への本気度を体感し、その後7月には日本株売買動向で、外国人投資家の買い越しが続いた。
今回はまだウオーミングアップの段階だ。米国株に高値警戒感を抱くファンドは、もっぱら欧州株をオーバーウエートに動いている。日本株と米国株はニュートラル。新興国株はアンダーウエートだ。基本的に欧米セントリック、つまり欧米中心の運用で、日本株はまだまだエキゾチックな投資セクターである。
しかし、欧州株も不安を抱えるイタリア、波乱含みのブレグジット、金融政策が不透明な欧州中央銀行(ECB)、対米関係のきしみなど不安定要因を抱えており、、彼らは長居する気はない。10月くらいには、欧州株をニュートラルに落とし、日本株をオーバーウエートにする可能性を直接対話で実感した。
安倍晋三首相の三選は材料として鮮度は低いが、先進国で安定的政権の存在は、いまや「絶滅危惧種」とのコメントが印象的だった。日本株という選択肢は運用の定番メニューには入っているので、地域別循環物色の過程で、出番が回ってくるだろう。ただし、2019年は日銀の出口戦略が現実味を帯びるとみられており、年内には売り戻す姿勢だ。特に日銀による上場投資信託(ETF)購入には違和感を感じており、もの言わぬ株主である日銀の保有株がどのように処分されるのか、それともされないのかについては議論が沸騰した。なお外為関連では、安全通貨は円より米ドルとの見方が多かった。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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