アマゾンの法人向け通販、開始から1年 省力化後押し
米アマゾン・ドット・コムが法人向けの通販サービス「アマゾンビジネス」で日本の顧客獲得を急いでいる。1年前にサービスを始めたが、経費精算など企業の作業を軽減する機能などを追加している。昨年の日本に加え、今年はイタリア、スペインなどでもサービスを始めており、国際展開を加速している。
日本では2017年9月にサービスを始めた。数億点という豊富な品ぞろえだけでなく、出品社と購入者の様々な業務をアマゾンが代行するのが最大の強みだ。
アマゾンビジネスの利用には法人用のアカウントの登録が必要。介護施設や飲食店を運営する事業者などは、日用品や原材料を購入する際に、従業員が個人で立て替えた支払いを経費で処理する作業が発生する場合がある。
アマゾンビジネスでは、購入者はすべての商品を法人名義の請求書で一本化するため、一つ一つの経費処理が不要になる。全国に約100の介護施設を運営する事業者は、この機能で年9000時間の労働時間が削減できる見通しだという。従業員による経費処理の不正を防止する効果もある。
法人の場合、1回の購入量が多いため、個人向けと比べて同じ商品でも安い価格を設定できるほか、7月には購入者が出品者に値引きを要求する機能を設けた。複数の出品者が同じ商品を出品している場合、購入者は欲しい数量を指定すると、48時間以内に出品者から売買条件の提示を受けられる。購入者は一番条件が良い出品者から商品を買える。
アマゾンはクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」も手がける。アマゾンビジネスの事業者がAWSを使えば、協業する事業の幅が広がる可能性もあり、「いろいろなコラボレーションを検討していきたい」(アマゾンジャパンの石橋憲人事業本部長)としている。
出品者数や売上高は非公表だが、「計画通りに推移」(石橋事業本部長)しているという。ただ、法人向け通販サービスはアスクルや大塚商会など国内事業者のシェアが高い。アマゾンは約1年の期間限定で無料で提供してきた「お急ぎ便」などが10月下旬に終わる。本格的な競争がこれから始まる。
(企業報道部 亀井慶一)