スタートアップ300社集結 デロイトトーマツ
デロイトトーマツグループは11日、国内外のスタートアップ企業が集まるイベント「デロイトトーマツイノベーションサミット」を都内で開いた。今年は前年の2倍を超える約300社が出展。外部との連携で新事業を創出する大企業のオープンイノベーションを促す考えだ。講演会ではIT(情報技術)企業などの経営者らが登壇し、成長企業を育てるエコシステム(生態系)づくりについて意見を交わした。
フィンテックや人工知能(AI)、ロボティクスといった分野ごとにスタートアップが出展。日本展開を図る約100社の海外スタートアップも参加した。デロイトトーマツベンチャーサポート(東京・千代田)インキュベーション事業部の長坂英樹氏は「海外の若い企業は特に日本のヘルスケア市場に注目している」と指摘する。
インドを中心に展開する米ゴーキーテクノロジーズ(カリフォルニア州)は予防治療サービスを紹介した。独自のウエアラブル端末で血圧や運動量などの個人データを記録、利用者はアプリ上でトレーナーや医師に健康状態を相談できる。AIでスコア化した健康データを基に保険商品なども提案するのが特徴で、約50万人が登録している。
ゴーキーの共同創業者兼最高マーケティング責任者(CMO)のアビシェク・シャーマ氏は「高齢化が進む日本は有望市場の一つ」と期待を示した。年内に香港やシンガポール、マレーシアに進出する計画で、日本展開に向け複数の大手保険会社と協議を進めているという。
デロイトトーマツによると、インドやイスラエル企業などの間では日本で実績をつくった上で他のアジア地域への展開を図る動きが広がっている。オープンイノベーションにかじを切る日本の大企業も増えるなか、「すぐには収益化しない新規事業の担当者を評価する仕組みも求められる」(斎藤祐馬事業統括本部長)。
パネル討論ではスタートアップの担い手として大学や大企業にいる人材の参画が重要と指摘する声が相次いだ。筑波大学教授で装着型ロボットを開発するサイバーダインの山海嘉之社長は「自分が起業した当時は大学教授が事業をやることは肯定的に見られなかった。今では人材育成の仕組みが変わり、在学中に起業する大学院生も増えてきた」と話した。
デジタル製品のテストを手掛けるデジタルハーツホールディングスの玉塚元一社長は「日本は大企業に人材が滞留している。スタートアップに行き、少なくとも3年以上働いて経営の全体像をみることで人材が育つ」と述べ、産業界の人材流動化が重要との認識を示した。
(駿河翼、鈴木健二朗)
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