三菱地所、国内初のCLT高層マンションを公開
三菱地所は11日、仙台市内で建設を進めているCLT(直交集成材)を床材に使用した国内初の高層賃貸マンション(10階建て)の施工現場を公開した。CLTを使うと工期短縮などのメリットがあるが、国内では耐火性能などの問題で高層建築物の床材に使った例はなかった。同社は完成後も経年変化などのデータを収集。CLTを使った建築物を普及させる計画だ。
賃貸マンションは仙台市泉区で同社が開発した「泉パークタウン」内に建設。来年2月の完成を目指している。総戸数39戸で、床材の約3割のほか壁材にもCLTを使っている。
今回の工事ではスギの丸太を厚さ3センチ程度の板に加工。シートを直交状に重ね接着剤で一体化したCLTを使っている。
外周部の柱は鉄骨だが、室内の柱には集成材を使用。木材の使用割合を高めた。建物の躯体(くたい)工事が終盤に入ったことから施工現場を報道陣に公開した。
CLTを使った高層建築物は海外では普及しつつあるが、国内では地震への備えなどからより高い耐火性能が求められるため、CLTを床材に使用した建築物は5階建てまでだったという。同社は竹中工務店と共同で技術開発を進め、CLTの上下面を石こう系の材料を使った耐火皮膜で覆い、耐火性能の問題をクリアした。
通常の鉄筋コンクリート造と比べ、木材の使用量が増えることで建物の重量が軽くなり、躯体(くたい)に使用する鉄骨の使用量を減らすことができる。「全体重量は3~4割軽くなった」(竹中工務店)という。またCLTは施工がしやすく、「工期は従来工法と比べ3カ月程度短くなった」(三菱地所)。
地球環境への配慮と合わせ、メリットが大きいようだが、課題はコスト。初の高層建築物への使用とあって技術開発段階から国の補助金が出ているが、耐火皮膜の開発・使用などで「3割程度はコストが上昇した」(三菱地所)という。
三菱地所は建設工事が進む下地島空港(沖縄県)のターミナルビルでもCLTを使用。仙台の賃貸マンションでも完成後に経年変化のデータを収集し、他の建築物にも利用を進めることでコスト圧縮につなげる考えだ。
(仙台支局長 川合知)