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災害現場で移動型ATMが活躍 西日本豪雨でも

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最大震度7の地震が襲い、全域で大規模な停電が発生した北海道。交通網のほか金融インフラも寸断され、現金をおろすためのATMも一時的に使えなくなった。災害現場で注目されているのが車にATMを積み込んだ移動型ATMだ。使えなくなった店舗の代わりに、利用者の現金需要に対応している。

「しんきんの絆により新宮信用金庫から応援を頂きました」――。岡山県倉敷市の真備町地区で、こんなステッカーを貼った青いバスが走っている。7月の西日本豪雨で甚大な被害が出た地域だ。派手な外装のバスは和歌山県の新宮信金(新宮市)が保有する移動金融店舗車だ。

新宮信金は2011年9月の紀伊半島豪雨被害で店舗の通信が遮断され、ATMや窓口の端末が使えなくなった。これを契機に車で金融サービスを利用できる移動型金融店舗を導入した。ATMを積んでおり、携帯電話の電波が通じるところであれば、通常の店舗と同じようにATMや窓口での取引を利用できる。

現在は西日本豪雨の被災地にある吉備信用金庫(岡山県総社市)に貸し出し中だ。ATMやシステムの変更が必要だったものの、2~3日程度で吉備信金の顧客が利用できるようにしたという。

災害対応だけでなく、店舗を出す代わりに、この移動型金融店舗を利用者のいる地域に展開することもできる。新宮信金では店舗がなかったり、統廃合したりした地域10カ所程度を2週間ごとに訪問しているという。

被災地では、停電などにより店舗でクレジットカードや電子マネーが利用できないことも多く、現金の需要が高い。キャッシュレス化が進み、財布に入っている現金が減っている人も多く、被災した際にはATMで現金を引き出したいとのニーズは強いという。

ATMを積んだ移動型店舗を導入している信用金庫は、新宮信金のほかに静岡県の磐田信用金庫など全国で5つほど。地方銀行でもおよそ20行にとどまる。将来の大災害に備えて導入を準備する金融機関もあるが、北海道の金融機関は導入していなかったという。

大手銀行も導入に向けて動いている。三菱UFJフィナンシャル・グループのフィンテック子会社、ジャパン・デジタル・デザインは移動ATMを開発中だ。まず鹿児島銀行と組んで、今秋にも実証実験を開始。普段はイベント会場に派遣し、一時的な現金ニーズの高まりに対応しつつ、災害時にも活用できるようにする。

信金中央金庫の地域・中小企業研究所の刀禰和之上席調査役は「信金は共同のシステムを利用しているところが全体の8割に上るため、システムの変更がしやすい。だが地域の制約や災害が大きかった場合など必ずしも貸し出せる訳ではないので、各金融機関で備えが必要」という。

(水戸部友美)

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