「反米」3首脳会議、イドリブ攻撃で平行線 事態緊迫
【テヘラン=岐部秀光】ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、イランのロウハニ大統領は7日、イランの首都テヘランで首脳会議を開いた。シリア北西部イドリブでアサド政権が準備する反体制派最後の主要拠点への攻撃をめぐり、トルコが自制を求めたのに対し、ロシアとイランはアサド政権を支持する立場で平行線をたどった。アサド政権が作戦を本格化する構えで、事態は緊迫しつつある。
首脳会議の様子は異例のライブ中継で各国民に伝えられた。プーチン氏は「(反体制派が)イドリブの安定をそこね、化学兵器をつかおうとしている」と批判。ロウハニ師は「イドリブのテロリストとの戦いを続けるべきだ」と述べた。
これに対し、シリアの反体制派を助けてきたエルドアン氏は「多くの市民が巻き添えとなる」と懸念を表明した。同氏にとっては会議が攻撃を阻止する最後の機会とみられたが、「時間切れ」になったとの見方が出ている。
異例のライブ中継の背景には、3首脳が指導者として国の利益をまもる立場を貫いたことを国民に示すねらいがあったとみられる。「停戦」という言葉を何度も繰り返し、食い下がるエルドアン氏の発言を聞いて苦笑するロウハニ師の表情もカメラがとらえた。
「反米」で結束する3首脳だが、シリア情勢では立場が食い違う。
中東での影響力拡大をめざすロシアにとっては、反体制派の「最後のとりで」をアサド政権軍が奪還する意味は大きい。シリアの再建をロシアが主導するシナリオが一段と濃厚になる。
米国との対立で国際社会での孤立が深まるイランはロシアに同調するものの、費用がかかるシリアの戦線拡大は避けたいのが本音だ。
トルコは戦闘が激しくなり、たくさんの難民が押し寄せることを恐れる。「攻撃を容認した」という印象を与えると、国内でイスラム過激派によるテロを誘いかねない。
イドリブには、反体制派の戦闘員や一般市民300万人がいる。一部はアルカイダ系の過激派で、徹底抗戦するとみられる。7年間の内戦で最も激しい戦闘となり、深刻な人道危機をもたらすと国連は警告している。欧州の難民危機を再燃させたり、各地のイスラム過激派によるテロを刺激したりするおそれもある。
ロシア軍はイドリブへの空爆を開始。地上では政権軍のほかロシア特殊部隊やイランの支援するイスラム教シーア派民兵が一帯を包囲している。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討でシリアに介入した米軍は北部のクルド民兵を支援する任務が主で、影響力が限られている。