アップルウオッチなど対中関税第3弾の対象に
【シリコンバレー=佐藤浩実】米トランプ政権が近く発動を計画している2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に対する追加関税第3弾で、アップルの腕時計型端末やスマートスピーカーが対象になることがわかった。アップルが米政府に宛てたレターで明らかになった。主力の「iPhone」ではないものの、成長が著しい事業分野のため業績への影響は確実だ。米メディアの報道を受けて7日のアップル株は急落した。
腕時計型端末の「アップルウオッチ」、イヤホンの「エアポッズ」、スピーカーの「ホームポッド」、小型コンピューターの「マックミニ」、タブレット端末と一緒に使う電子鉛筆、革製のカバー、ケーブル類などに25%の追加関税がかかる見込みだ。アップルはこれまでに発動された対中追加関税については「直接的な影響はない」(ティム・クック最高経営責任者)と説明していた。
アップルの製品は中国で最終的に組み立てて世界に販売しているが、日米韓や台湾などからも素材や中間財を調達している。米企業が素材を供給していても、中国から輸入する最終製品に追加関税がかかれば、その分を販売価格に転嫁するとみられる。身近なIT(情報技術)機器が対象となることで米国内の消費者の反発も強まりそうだ。
アップルは米政府に宛てたレターのなかで「米国の消費者により高い価格をもたらすことになり、結果として米国の成長と競争力を落とす」と強調した。
2000億ドルの追加関税の対象となる製品の大半について、アップルは「その他」という項目で業績を開示している。「その他」の2018年4~6月期の世界での売上高は37億4千万ドルでアップル全体の7%。一方で、前年比の成長率は36.7%とiPhoneやiPadの伸びを大きく上回っている。8月に時価総額が1兆ドルを突破した際も、これらのiPhone以外の部門の成長が確認できたことが投資家のマネーを集める材料になっていた。
第3弾の追加関税発動の現実味が高まるにつれて、米IT業界は相次ぎ政府に見直しを求めている。
米半導体最大手のインテルは6日に提出したレターで「世界に広がったサプライチェーンは簡単に変更することはできない」と主張。第2弾で対象となった半導体に加えて第3弾では幅広い電子機器に使われるプリント基板なども対象になることを懸念。消費者の負担が増えるだけでなく、情報通信分野の研究開発(R&D)投資の減少につながるとした。
サーバーやパソコンを手掛ける米デル・テクノロジーズは8月末の公聴会でマイク・ヨン副社長が証言。サーバーやコンピューター部品、ネットワークスイッチなどが第3弾の対象になることについて「デルと従業員に重大な損害を与える」と主張していた。