次は日本か、トランプ氏示唆
「日本とは良き関係を築いてきた。もちろん、私が彼らに、(彼らが)どれだけ払わねばならないか語れば、直ちにそれは終わるだろう」
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、米トランプ大統領の同紙コラムニストへの発言として報じた。「北米、欧州の友人たちと通商交渉を終えても、それで終わりというわけではない。日本との交易条件を気にしているようだ。」と同コラムニストは書いている。
外為市場では昨晩、1ドル=111.30円台から110.80円台にまで円高が進行したが、この報道も材料視されている。
市場が神経質になるのは、メキシコとの通商交渉で「為替条項」が入ったとされているからだ。その「為替条項」の詳細は明らかになっていない。しかし、これが前例となり、日本にも提示される可能性が危惧されている。
一般的に、米財務省による「為替操作国」の基準は、(1)貿易収支の規模について、年間の対米黒字額が200億ドル以上(2)経常収支の規模について、年間黒字額が対GDP比で+3%以上(3)継続的な為替介入による一方的な外貨の買い入れが過去12カ月間でGDPの+2%以上、の3点とされている。
日本は、貿易収支と経常収支の2点に抵触して「監視対象国」と認定された。おりしも、5日に米商務省が発表した7月貿易収支では、対日貿易赤字が前月比2.9%増の54億6000万ドルになった。
11月には財務省が議会に「為替報告書」を提出する予定だ。トランプ大統領は外電とのインタビューでは「為替操作の判定基準を検討中」とも語っている。
このような状況下、しかも中間選挙を意識した発言が連発されている時期ゆえ、市場も無視できない。
このほど、トランプ政権の現職高官が匿名で米紙に寄稿して「内部告発」した。各幹部の「私ではない」との否定発言が相次ぐなか、火消しにやっきになっているトランプ大統領が、選挙民の目を外に向けさせる意図も透ける。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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