NAFTA再交渉、米国とカナダが5日協議再開
貿易紛争の解決制度で溝
【ワシントン=鳳山太成】北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡る米国とカナダの協議が5日再開した。米国とメキシコは大筋合意済み。米国とカナダの両政府は8月末までの合意を目指したが、貿易紛争の解決制度や農業で折り合えなかった。トランプ米大統領はカナダ抜きの新協定発効も辞さない構えを示しながら圧力を強めている。9月中に合意し、3カ国協定として維持できるかが大きな焦点だ。
カナダのフリーランド外相は5日、ワシントンを訪れて米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と会談する。両者は8月31日まで4日連続で断続的に協議を開いたが結論は出なかった。
争点はなお多い。カナダのトルドー首相は4日の記者会見で、米国が撤廃を求める協定19条の紛争解決制度について「カナダには必要だ。決して考えは変えない」と維持を求める姿勢を強調した。相手国が課した反ダンピング(不当廉売)関税に不服を申し立てられる制度で、NAFTAの前身である米・カナダFTAの交渉時にカナダが導入を求めた経緯がある。
カナダ紙グローブ・アンド・メールによると、トランプ氏が批判する乳製品の保護策では、カナダ側が市場を一部開放するなど譲歩の用意があるという。米・メキシコで合意した、自動車の関税ゼロの条件を定めた「原産地規則」の厳格化は、米国とカナダの間で大きな争点になっていない。
米政権は8月末、メキシコと2国間の新たな貿易協定を結ぶ意思を米議会に通知した。米・メキシコ両政府は、メキシコの現大統領が退く11月末までに、新協定に署名したい考え。米貿易関連法では署名の60日前には新協定の全文を公表しなければならないため、3カ国協定とするには9月中に米国とカナダが妥結する必要がある。
トランプ氏は1日「新たなNAFTA合意にカナダを含める政治的な必要はない」と語り、カナダとの協議が不調に終われば米国のNAFTAからの離脱も辞さない構えを改めて示した。一方、米国の議会、産業界、労働組合は米国、メキシコ、カナダの3カ国協定の維持を求めている。
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