シリアのイドリブ攻撃で避難民が最大80万人に
国連が警戒、アサド政権軍の攻撃間近か
【カイロ=飛田雅則】国連人道問題調整事務所(OCHA)の当局者は29日、内戦が続くシリアでアサド政権軍が反体制派の拠点である北西部イドリブ県を攻撃すれば、最大80万人が避難民となる可能性があると指摘した。AFP通信が伝えた。政権側は反体制派の最後の拠点である同県の制圧を目指し、総攻撃の準備を進めているとみられている。
同県はすでに人道支援が必要で、国連はトルコ国境から食料や医療品といった物資を運んできた。当局者は「この地域で戦争行為が激化すれば、最大80万人が家を追われる。人道支援を必要とする人の数が劇的に増える」と懸念を表明した。
アサド政権軍は8月中旬頃、地上侵攻をするために、同県近郊に部隊を配備してきたと指摘されている。上空から反体制派に投降を呼びかけるビラをばらまいたとの情報もあり、攻撃が迫っているとの見方が広がる。
当局者はアサド政権軍の攻撃が始まれば、「人道的な大惨事となる」「衝突で人道支援が損なわれ、住民が脅かされることになる」と指摘した。同県や周辺の反体制派が支配する地域には、戦闘員や一般住民を合わせて300万人ほどが暮らしているとみられる。
2011年の内戦以降、アサド政権はロシアやイランの支援を受け、北部アレッポや首都ダマスカス郊外を制圧。追い込まれ、合意した反体制派をイドリブに移動させてきた。政権側は1カ所に集めてきた反体制派を一気に掃討するもようだ。周辺国への難民の流出も懸念される。