「銀商融合」へ りそな、大手で初 決済端末、無料で小売店に
りそな銀行が大手行で初めて「銀商融合」へ動き出す。11月から小売店に無償で決済端末を配布し、物やサービスの売り買い情報を入手する。銀行の決済情報は単なる資金移動の動きにすぎず、利用実態をひも付けないと付加価値を生まない。AI(人工知能)の進化で大量のデータ処理を簡単にできれば「情報ビジネス」に参入もできる。 決済端末はクレジットカードから交通系ICカード、QRコード決済まで1台で対応できる。システムもりそなが用意する。こうしたネットワーク構築は「アクワイアリング」業務と呼ばれる。銀行が直接参入するのは大手行で初めてだ。
新事業の狙いは消費・購買ビッグデータの収集だ。電話の通話記録だけでは通話内容が分からないように、引き落としなど決済データだけでは利用者が何を買ったか分からない。一方、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のLINE(ライン)が決済サービスを始めるなど、銀行以外の業種は銀行と提携し決済情報も入手し、顧客向けマーケティングに応用しようとしている。
データ収集に向け、りそなが選んだのは「無料戦略」だ。加盟店に置く端末も利用者が使うアプリも無償。りそなが費用を負担する。早期に年3兆円の取り扱いを目指すため、時間を買う戦略だ。
りそなは来年1月にQRコード決済「りそなPay」も始める。加盟店開拓では大手カード会社などライバルは多い。通常、加盟店が支払う手数料はクレジットカードでは平均3%程度。りそなは、りそなPayを始め銀行口座と連結した決済の手数料も1%程度に安く設定した。
なぜ、りそながここまで先行投資するのか。想定しているのは2つの方向性だ。
1つは従来の融資や金融商品販売を進化させる可能性だ。例えば、担保や財務諸表に販売情報も把握できれば、与信審査をきめ細かくでき、今まで取引できなかった零細企業への融資ができるかもしれない。りそなホールディングスの鳥居高行執行役は「同意を前提にアプリ利用者のデータも収集したい」と語っており、個人向けに投資信託の販売の方法も需要に応じたやり方に変更できる。
もう1つはキャッシュレス化が進めば、データの持つ重要性が高くなる可能性だ。AI(人工知能)が発達すれば今までできなかったビッグデータの解析が容易になる。地銀など体力の乏しいところは開発余力も小さく、データ解析のシステムやノウハウを身につけておけば、りそなが他行に外販することも可能になる。