ユニーク賞に慶応大・竹内チーム 第18回学生対抗円ダービー
学生が円・ドル相場の予想を競う「第18回全国学生対抗円ダービー」で、独創的な手法を用いたチームを表彰する「ユニーク賞」に、慶応義塾大学の竹内一宇さんのチームが選ばれた。ディズニーランドの来園者数という意外なデータを用いた着眼点と、予測を裏付ける丁寧な分析が評価された。
竹内さんのチームは、東京ディズニーランドの来園者数の増加は日本の景気の良さを示し、円買いにつながると予想。一方で米ディズニーランドの来園者数の増加はドル買いにつながると考え、東京ディズニーランドの来園者数を米ディズニーランドの来園者数で割った独自指数を予測に用いた。
竹内さんは「東京ディズニーランドでアルバイトをしていて、来園者数が予測に使えるかもしれないと思った」という。自分の体験に基づいた独自の着眼点が評価された。審査委員で三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミストの宅森昭吉さんは「日本だけにとどまらず米国側の影響を考慮している点もすばらしい。予測の確からしさをしっかりと示しており、お手本になる分析だ」と評価した。
ユニーク賞に及ばなかった「あと一歩で賞」に選ばれた慶応大の崔志允さんのチームは、ネットを通じた消費と円需給の関係に着目。ネット消費を捉えるため、宅配便の件数を予測の材料に選んだ。今どきの話題をデータとして捉えたことを評価されたものの、予測の確からしさは示せていなかった。審査委員の藤田康範・慶応大教授は「宅配便件数が変動する季節要因を調整するなど、データの加工を工夫できたはずだ。まさにあと一歩」と評価した。
また、機械学習という最先端の手法にチャレンジし、神戸大学の寺田伊織さんのチームが「チャレンジ賞」に選ばれた。藤田慶大教授は「多くの国の通貨の動きを用いた予測結果を示すだけで終わってしまったのが物足りない。経済学的な理論と結びつけて、その手法がなぜうまくいったのかという説明を考えてほしかった」と話した。
「目のつけどころが良かったで賞」には東北学院大学の佐藤康太さん、慶応大の浦田瑞生さんの2チームが選ばれた。佐藤さんのチームは米国のカジノ売上高と日本のパチンコ売上高に着目した。宅森氏は「統計的な分析までできていれば面白かった。今回は為替の動きと合わせたグラフを示したところで終わってしまっており、残念だ」と話した。
浦田さんのチームは、マジックは観客の予想外のことが起きるほど衝撃が大きいという経験から着想し、投資家にとっても予想外のことが起きれば市場への影響が強いはずだと考えた。予想外のことを捉える指数として、円相場が反発・反落した回数を予測に用いた。宅森氏は「着想は面白いが、予測が為替の動きをどれくらい説明できているかを表す決定係数が低く、実際に使うには難しい指標になってしまっている」と話した。
今後、学生円ダービーに参加を考える学生に向けた助言として審査委員が指摘したのは、独自の着眼点をいかに納得できる説明として示せるかということだ。
宅森氏は「ユニークな変数を見つけた上で、為替に影響を与えるとされるマクロ経済の要因に結びつけるための説明が必要」という。着眼点がどれほど独創的でも、実際に経済を動かすと考えられる理論に基づいて為替に影響する理由を説明できなければ、予測には使えない。見つけた指標がうまく働かないときは、データの加工のしかたを工夫したり、潔く別の切り口を探したりする試行錯誤が求められる。
藤田氏は「主張の確からしさを数値で示すことが大切だ」という。例えば、複数のデータの関係性を表す数値として「相関係数」がある。エクセルで簡単に計算できる。予測を説明する資料の中に、グラフと一緒に相関係数を載せるだけでも、主張の確からしさは増す。担当教員に質問したり教科書を読んだりして、予測の根拠として使える統計的な手法を学んでほしいと話す。